小児は白き糸のごとしなんて言葉がございます・・・
子どもは純粋無垢で汚れのない、白い糸のようだってんですな・・・
本当にそうなら親はそこまで苦労しませんもんで・・・
初天神を聞くなら「柳家小三治」
柳家小三治の「初天神」は、父親と息子が初詣に出かける日常のやり取りを描いた噺で、父親が息子に振り回される様子がユーモラスに演じられる。小三治の独特な間と表現力で、親子の微笑ましい掛け合いや、人情味あふれるやり取りが印象深く、笑いを誘う。
おっかあ!おっかあ!
羽織出してくれよ!羽織出してくれってんだよ!
何だろうねえこの人は・・・
新しく羽織をこしらえたもんだからさあ・・・
用もないのに羽織を着ちゃあ表へ出たがって・・・
馬鹿なこと言ってやがらあ・・・
用もねえのに羽織を着て表へ出たがる奴があるか!
用があるのよ!ええ?ほら天気もいいやな!
だからよ、ちょっとその羽織をこう上から羽織ってね、うん、ちょいと・・
ちょいと天神様のとこお参り行こうと思ってんだけどさ・・・
ああ、天神様?初天神じゃないか今日は・・そう・・・
じゃあさうちの金坊一緒に連れてってやんなよ
え?
うちの金坊一緒に連れてってやってくれってんだよ!!
金坊?金坊は勘弁してもらおうじゃねえか
勘弁してもらおうじゃねえかって言ったって自分の子じゃないかさあ!
自分の子だっ、自分の子だから嫌なんだよあいつぁ・・・
あいつ表出た途端だ
あれ買ってくれこれ買ってくれ、あれ買ってくれこれ買ってくれ、あれ買ってくれこれ買ってくれ、あれ買ってくれこれ買ってくれって・・・
あいつと表歩いた日には俺ぁのんびりとも出来ねえ・・・
早く羽織出しねえ、羽織を出せってんだよ!
ちょいと向こうへ・・・今日は連れてかないの!!
ぐずぐずしてちゃだめだい!こういうことはね!
嗅ぎ付けるんだよ!鼻が利くんだすぐ帰ってくるんだから!
早く羽織を出せってんだよ、あの野郎が帰ってきたらねえ・・・
あっ帰ってきた・・・
金坊~~!!
あっおとっつあん、ただいま~!
なんだ・・・も、もう帰ってきたのかあ?
どっか行って遊んで来い
え?
どっか行って遊んで来い!
もうどっか行って遊んできちゃった!
もっとどっか行って遊んで来い!
だってみんな友達家帰っちゃったもん!
友達家へ帰ったらお前も向こうの家行って遊べ!!
なんだよ!?あたいの家こっちだよ~
あれおとっつあんどうしたの~?羽織なんか着ちゃってさあ~
新しく羽織をこしらえたもんだから!!
用もないのに羽織を着ちゃあ表へ出たがって!!
どこで教わるんだそういうことは!
えぇ?用もないのに羽織を着ちゃあ表へ出る奴があるか!
用があるんだよ!
これからよ、怖~いおじさんが大勢揃っている所ヘな、そろって仕事の相談だあ!
え~またまた~ダメだよ~!嘘言ったってわかるよ!
顔色みりゃあわかるよ!顔色見れば!
目の色見ればわかんだよ!ホント言ってっか嘘言ってっか!
長年の付き合いだもん・・・
あっ分かった!今日さ、初天神だからさあ、天神様んとこにお参り行くんだろ?
ねえ、おとっつあん天神様すきだからさ!ねえおとっつあん!
あたいも一緒に連れてってよ!ねえおとっつあん!ねえ初天神!
ああ!そうだよぉ!
そうだけどなおめえは連れてかねえんだよ
何でってことはねえだろ?この前言っただろ?
おめえとは二度と表一緒に歩かねえって、おめえを連れて表へ出ることはねえって!
言ったじゃねえかよ!何があったって忘れたのかおめえは?
表出た途端だ、あれ買ってくれこれ買ってくれ、あれ買ってくれこれ買ってくれってぇ!!
えぇ?おめえ他に台詞がねえのか?
何?
ダメ!
そんなこと言わないでさあ連れてっておくれよ~
ねえおとっつあんいいじゃねえかよ~
あれ買ってくれこれ買ってくれって言わねえからよ~
ねえ~いいだろ?
だめ!ここで言わなくったって必ず表でりゃあ言うんだから!
言わないよぉ~!ねえ!おとっつあん!
連れてっておくれよ~!ねえおとっつあん!
ねえ~男と男の約束だからねえ!
ねっ!おとっつあん!男と男の約束だから!
何を言ってやがんだ!気取ったこと言ってやがらあ!
男と男の約束?てめえはうちの中だけだよぉ!男と男の約束は!
表へ出た途端に男と女の約束になっちまうじゃねえか!
だめだ!連れて歩けねえや!ダメ!
ね~ん・・連れてっておくれよ~、いいじゃねえかよ~連れてっておくれよ~
おっかさん頼んでおくれよ~!!
おとっつあんによぉ~~ぉぉ~~
ちょいと~~・・・
連れてきなよ~~・・
やだよ置いてかれちゃあ!
あんたぁろくなことがないんだからさぁ!
この前だってそうだよぉ!カミさんに小便したりなんかしたじゃないかさあ!
連れてきなってんだよ!
ねえ~連れてっておくれよ~
連れてってやんなよ!
連れてっておくれよ~
連れてってやんなよ!
連れてっておくれよ~
連れてってやんなよ!
もううるさいねえ!お前たちはぁ!!
連れてくよぉ!!おめえが悪いんだよ!お前が!
えぇ?俺がおめえ羽織を出せっつった時にすぐ羽織を出せばよかったのによお!
こんなことにならねえで今頃一人でもって表へ出て、つっつっつ~っと歩いてんだよこっちは!
いいよ!連れてく!
いいか?言うこと聞かねえとただじゃ置かねえぞ!
男と男の約束だぞ!?分かってんなぁ!?
金坊~!おとっつあんの言うこと聞かないとねえ!
今日おとっつあんに川ん中おっぽりこまれちゃうよ!?
ほ~ら見ろ!おかっつあんがそういうんだからなあ?今日は遠慮なくいくぞ!?
ほら歩け!・・ったく・・
初天神を聞くなら「柳家小三治」
柳家小三治の「初天神」は、父親と息子が初詣に出かける日常のやり取りを描いた噺で、父親が息子に振り回される様子がユーモラスに演じられる。小三治の独特な間と表現力で、親子の微笑ましい掛け合いや、人情味あふれるやり取りが印象深く、笑いを誘う。
てめえなんざいうこと聞かなかったら帯つかんで、そのまんま目より高く差し上げて!
かっ!!どっぱ~ん!!
川ん中おっぽりこんじまうからな!
川ん中なんておっぽりこまれたっていいもん!
泳げるもん!
泳げたって駄目だ!
川ん中には河童がいてなぁ!
おめえのことなんざ頭からガブガブっと食っちまうからなあ!
おとっつあん面白いこと言ってんねえ・・・
おとっつあんねえ、学校の先生がこう言ってたよ?
河童ってのはねえ!架空の動物なんだって!
知ってる?架空の動物って、どういうことか知ってる?ね?
いると思われてもホントはいない動物のことを架空の動物って言うんだってねぇ!!
ほんとはいないのにさあ・・・
いまだにいると信じて子供の小言に使うなんて・・
うちのおとっつあんは本当にあどけない
何言ってんだよこの野郎・・・
ほらほらほら!傍くっついて歩けよ・・・
人が大勢出てきた迷子になっちゃいけねえ・・・
ねえおとっつあんおとっつあん随分人が大勢出て来たけどさ・・・
これは何だい?なんでこんなに・・・
今日はおめえ初天神だもの当たりめえよ!
お参りから帰ってくる人とこれから行く人で肩と肩でぶつかってよ!
それでごった返すのよ!
へ~・・・
ねえおとっつあん!
なんだ?
人も大勢出てるけどさあ・・・
お店もいっぱい出てるよねえ・・・
ああそうだな、今日はいっぱい店でてるなあ
ねえおとっつあん!
なんだ?
こんなにいっぱいお店が出てるのにさあ、今日はさぁ・・・
あたいはおとっつあんにあれ買ってくれこれ買ってくれって言わないでしょ?
おおそうだなあ、そういわれてみりゃあれ買ってくれこれ買ってくれって言わねえなあ
ねえ!言わねえよねえ!
いい子だよねぇ?
おうそうだそうだ、そうやっていい子にしてたらよぉ!
おとっつあんいつだっておめえを連れて歩いてやるんだからな?
これからもずっといい子にしてろよ?
うん!ずっといい子にしてる!
こんなにいっぱい店が出てるのにさっ、あれ買ってくれこれ買ってくれって言わねえでさっ・・・
言わねえもん・・・
ねえおとっつあんいい子だよね?
ああいい子だよ
ねえおとっつあん!おとっつあん!!
なんだよ!?
いい子にしてさ、あれ買ってくれこれ買ってくれって言ってねえからさあ・・・
ご褒美になんか買っておくれよ!
始まりやがったこいつぁ・・・
今日はそういうこと言わねえ約束で来たんだろ?
ダメだよダメ!ダメったらダメ!!
う~ん、もういいじゃねえかよ~!!
今日はずっと我慢してあれ買ってくれこれ買ってくれって言ってねえんだからさあ・・・
今日はいい子にしてたんだからさあ・・・
ご褒美に何か買っとくれよ!
何かいいことしたらご褒美くれなくっちゃあ・・・
後の励みにならねえよぉ・・・
ねえおとっつあん、あそこにリンゴ売ってるからリンゴ買って!
リンゴなあ、リンゴあれすっぺえから毒だ
毒なもん売ってるわけねぇじゃねえかよぉ・・・
じゃあ、みかん買って?
みかんなあ、あれもすっぺえから毒だ
何だよぉ・・・
じゃ、じゃあ柿買って?
柿渋いから毒だ
ううう・・バナナ買って?
バナナ長えから毒だ
長えってそんなこと言ってたらみんな毒になっちゃうじゃねえかよぉ!
何か買っとくれよぉ!!
うるせえなあ本当に!いいかおい!!
男と男の約束だっておめえが言い出したんだぞ?
だから男と男の約束で、あれ買ってくれこれ買ってくれって言うんじゃねえんだからさあ!!
ご褒美だも~~ん!
飴玉1つ買っておくれよ?
ねっ、飴玉1つだけだからね?1つだけなんだから、飴玉!
ダメだよ、今日は買わねえ
そんなこと言わないでさあ・・・飴玉1つだけだからさあ・・・
おとっつあん飴玉買って1つおとっつあん飴玉1つおとっつあん飴玉1つ・・・
う~るさいなあ!!買わねえったら買わねえんだ今日は!
飴玉1つ買ってくれたら後はあれ買ってくれこれ買ってくれって言わねえから!!
おとっつあん!!飴玉!
おとっつあん!飴玉!おとっつあん飴玉!!おとっつあん飴玉!!
・・・
買え!!
買えたあなんだ買えとは!!だから嫌なんだよ俺ぁ!!
分かった分かった・・・じゃあ1つだけだぞ?
大きな声出すんじゃねえの、大勢人がいるんだから・・・
金坊!生憎だったなあ・・・
せっかく飴玉買ってやろうと思ったらよぉ!
飴屋が今日はいねえや!
おとっつあんの後ろに出てら
あら?
この野郎!見当つけてから言うやつがあるか!
ったく・・・
随分大きい飴玉だなあ・・・
ここに銭置いとくから!
何?どれでも好きなの1つ取れ?
おうそうか、ちょっと待て金坊!子供は手ぇ出すんじゃねえの!
こどもの手でペタペタ飴触ったらばい菌ついちまうだろ?
おとっつあんが選んでやっから!
さあどれがいいかなぁ!あっ、この赤っかいの赤っかいの!!
これいいな!口開けて!口開け!
ん?何?
女の子みたいでやだ?
生意気なことを言ってんじゃねえ!
そしたらおめえは男の子だろ?
ちゅぱちゅぱっ(自分の指を舐める音)・・・
じゃあ、この黄色いの黄色いの!え?
口の中まっ黄っ黄になるって?
黄色いんだから当たりめえよ!
じゃあ・・ちゅぱちゅぱっ・・
じゃあこれだこれ!ハッカハッカ!
ん?これは何?
すーすーして嫌だ?
ああ・・そうか・・・
ちゅぱちゅぱっ・・・
じゃあこれ・・ああ半分かけてやがる・・・
ちゅぱちゅぱっ・・・
ちょっちょっと親方親方!何してるんですか!
なんだかんだって方々舐め散らかされちゃあねえ!
こっちは商売ですから!
誰が舐め散らかしてるって?
子供が嫌だってんだからしょうがねえだろぉ?
おう金坊!おめえがぐずぐずしてやがるから怒られちまったじゃねえか!
おじさんおっかねえんだぞ?
ほら見ろ鼻の穴飴玉みたいにおっきいだろ?
ほら口開け口開け!っとにもう!手ぇ煩わせやがってぇ!
あっ歯ぁ当てんじゃねえ・・・
歯当てるってと歯おっかえちまうから!
歯当てんじゃねえの飴玉に!!
ちゅぱっ・・・
歯ぁおっかえるな・・歯おっか・・・えるなって・・さあ・・
本当はそうじゃないんだよね?おとっつあんね?
おとっつあんはさ?
あたいが飴玉に歯当てて舐めると、すぐ飴なくなっちまうもんだから
それで歯ぉ当てるな、あがおがああ・・
おめえ口ん中にほおばって口聞くんじゃねえの!
そらっ!上向いて舐めんじゃねえの!上向いて何か言うってと飴玉喉ん中に詰まっちまうだろ!
そうそうそう・・・
おいよだれ!よ~だ~れ!
家帰っておっかあに小言言われるんだ!よだれぇ!よくそれすすって!
上ばかり向いて歩くんじゃないの!ほら水っ溜まりが前にあるぞ!
前を見ろっての!
ああよだれぇ~!!
ほら水っ溜まり!!
前に水っ溜まりっ!!(金坊をぶつ)
うえええ~~ん・・・
ううううあああああ~~~~~ん!!!!
泣くんじゃないよ馬鹿野郎!みんな振り返って笑ってんじゃねえかこっち!
ばか野郎!!なんだ!男だろ!
ちょっとどやされてぐらいでギャーギャーギャーギャー泣きやがって!!
バカ!!泣くんじゃねえ!!
いっ!!
背中殴られて痛えから泣いてるんじゃねえやい!!
いきなり背中どやすからみろ・・・
びっくりして飴玉落っことしちゃったじゃねえか・・・
飴玉落としたぁ?うっかり殴れねえよこりゃあ・・・
ま、待ってろ待ってろ今おとっつあんが洗ってやっから・・・
何だおめえどこにも落っこちてねえじゃねえか
お腹ん中に落っことしちゃった・・・
それ食っちゃったんてんだよ!!
初天神を聞くなら「柳家小三治」
柳家小三治の「初天神」は、父親と息子が初詣に出かける日常のやり取りを描いた噺で、父親が息子に振り回される様子がユーモラスに演じられる。小三治の独特な間と表現力で、親子の微笑ましい掛け合いや、人情味あふれるやり取りが印象深く、笑いを誘う。
おとっつあん団子買って!
今飴買ったばっかりじゃねえか!
おとっつあんがどやすから飴落っことしたんじゃねえか!
責任取れ!現実から逃げるな!
子供のくせに親に文句言ってんじゃねえの!買わねえよ!
それにおめえ今日は男と男の約束って言ったろ?
早速破ってるじゃねえか!!
あれ買ってくれ、これ買ってくれって言わなかったご褒美だから違うんだよぉ~!
こっからが本番だからさぁ~!
なんだ本番ってぇ!!だったらなおさら買わねえよ!
う~ん・・・団子一つ買ってくれよぉ・・・
ねえおとっつあん!!
一本だけ!団子!一本! おとっつあん!一本おとっつあん!おとっつあん団子!おとっつあん団子!一本おとっつあん!
うるせぇ!買わねえったら買わねえよ!
う~~んんん・・・買ってくれよぉぉぉぉぉぉぉ・・・・
団子買って!団子買って!
買わねえ!!!
買って・・くれよ・・ぉぉ・
頼む・・団子買って・・ぐすっ・・
団子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・
買ってくれえええええええええ!!!!
誰に言ってんだおめえ!!言うなら俺に言えよ!
どうしてそこらにまき散らすんだよぉ!!
みんな通る人こっち振り向いて指さして笑ってんじゃねえかよ!!
みっともねえから泣くんじゃねえよ!!男がいちいち団子のことでぇ!!
おい!泣くの止め・・・
買う・・・
畜生・・・
だから俺ぁ嫌だったんだ!こうなることぁわかってたんだよ!
あのかかあが悪ぃかかあが!!
俺が羽織を出せと言ったときにすぐ出しゃあこんなことにはならなかったんだ畜生!!
分かったよ!買うよぉ!
泣くんじゃないの!男がいちいち団子のことで!
おう!団子屋!
へい、いらっしゃい
いらっしゃいじゃねえやこの野郎・・・
なんだっててめえ、こんなとこに店出してんだよ・・
いつも出てますよ
いつも出てるんだったらおめえたまには裏へ引っ込め!
目立っちゃってしょうがねえじゃねえかよ!
団子一本くれ、団子一本
何?蜜にしますかあんこにしますか?
決まってんじゃねえかあんこに・・・
蜜はべたべたべたべたこんなところにべたべたになってみろお前・・・
家へ帰っておっかあに小言言われんだよ?
こいつだけが言われるんじゃないんだよ?並べて言われるんだよ?
そういうことまで考えて商売しろよ!
あんこあんこ!
蜜がいい~~!!!
っとにこの野郎~~!!!
・・・蜜!!
おう!相手は子供なんだらよぉ、蜜たっぷりおまけしてやってくれってんだよ!
たっぷりおまけ!はいよ~たっぷりおまけぇ・・
たっぷりっとお~っとと~!うわぁーこりゃあ大変だ!
ずずずずっ(団子についた蜜を舐める)・・・
ずっ!!ずっ!!
ぺちゃ・・ぺちゃっ・・
あ~~今度こっちから垂れて・・
ずずずっず~!!ずずっ!!ぺちゃっずずっ
お前ねえ何だこの水っぽい蜜!?
こうやるとたらたらたらたらってこんなの蜜じゃねえ水だよ・・・
ずず~っ・・・ぺっちゃぺちゃっ・・
家帰って小言言われるって聞いてねえのかよおめえ・・・
はいっ
うぇ~~ん、蜜みんな舐めちゃった~!
初天神を聞くなら「柳家小三治」
柳家小三治の「初天神」は、父親と息子が初詣に出かける日常のやり取りを描いた噺で、父親が息子に振り回される様子がユーモラスに演じられる。小三治の独特な間と表現力で、親子の微笑ましい掛け合いや、人情味あふれるやり取りが印象深く、笑いを誘う。
っとにいちいちぎゃーぎゃー泣くんじゃないの!
今見てろちゃんとやってやっから・・・
おうおう団子屋お前よぉ、店っ先綺麗にしなきゃだめだよぉお前~・・・
食い物商売なんだからぁ!
髭お前ぇ何だそりゃあ、剃れちゃあんと!
汚ねえなお前の指!その壺も!
その壺何入ってんだ?
蜜が入ってます?
嘘つくねえぃっ!ホントに入ってんのか?見せてみろ・・
こりゃあホントだ、ありがてえや
チャポンっ
いけませんよ!あんたそういうことしちゃあ!
ほらほらほら!金坊!
あははおとっつあん頭良いね!!
ずずっずっ!ずず~!あっ・・ずず~ずっ!!
こいつぁね家帰って小言いわれちゃうよねえ!べたべた汚したらさあ・・・
ずっ!ずず~~!ず~ず~!ずーー!!!
ずっー!ぺちゃぺちゃ・・・
おじちゃん!その壺何入ってんの?
親子でそういうことしちゃあいけませんよ!
向こう行ってください!
はいはいっ早く来いっ金坊っ!
早くいかねえと天神様に怒られちまうよ、「なんだ遅えじゃねえかよお!」ってなあ・・・
おとっつあん団子ほんとにおいしかったです・・・
あたいおとっつあんのこと大好きですよぉぉ・・・
おとっつあんそうでもねえよ
ねえねえ、おとっつあん、あそこに凧売ってるから凧買っておくれよ
今団子買ってやったろ!!
団子買ってもらったって凧だもん~~!
この前買ってもらった凧どっか飛んでったんだ~糸切れてさあ~!!
凧買っておくれよお~!!
凧買って!!凧買って!!ねえ!凧っ!!
た・・こ・・
ぐすっ・・・
わぁ~~ん!!凧~~!
わぁったったったあ・・・畜生・・・
俺ぁ今日って日を忘れねえからなっ!!
みんなかかあが悪いかかあが!!
俺が羽織を出せ!!っていったときにすっ!と出しゃこんなことにはならねえんだ!
待ってろ待ってろ・・・
おうおう凧屋凧屋・・・
ん?なんだ金坊!?何?一番上の大きいの?
ありゃあダメだよ!畳一畳くれぇあるじゃねえか!
ありゃあねえ、ここは凧屋ですよってわかるようにわざと遠くから見えるように・・・
売らないのあれは!!
分かった今聞くから!ちょっと黙ってろ!
おいっ!凧屋凧屋!
あそこの一番大きいの・・・
あれ看板だもんなあ、売らねえやなあ?
売りますよ
いやいや売らねえやなぁ!!
いえいえ売ります、うちは何でも売っちゃうんですぅ・・・
坊っちゃんっいらっしゃ~いこっちへ・・・どうしたの~?
え?おとっつあんが買ってくんない?
そんなことないよ~!おとっつあん、やさしいおとっつあんだもの~!!
どうしても買ってくれなかったらねえ・・・
買ってくれる法ってのをおじちゃんが教えてやるから・・・
ちょっとこっちへおいで~
あそこにね、昨夜の雨で溜まった水たまりがあるだろ?
あそこ行ってねえ、仰向けにひっくり返ってねえ、泥水ん中背中くっつけて手足バタバタさせて・・・
おとっつあん凧買って~~
おいそういう馬鹿なこと教えちゃだめだよ!!
しょうがねえなあ、じゃあそれでいいから!!
糸もつけろ!ホントにもう!
そら持て!ほら天神様にやる賽銭なくなっちまうじゃねえかよ・・・
急げ天神様に遅えって怒られちまうだろ?って言ってんだ
何?凧あげてえ?こんなとこで凧あげてる奴いるかよぉ!!
どこに・・・ああ、あそこの広場か?
ホントだ、やってやがらあ・・・
他にやることねぇのかねぇ・・・
しょうがねえなあ、分かったよ!付き合うよぉ・・・
それじゃあちょっとその凧持ってきて・・・
ちゃんと糸目なってるか?
よしよしなら大丈夫だあ、こう結んどいてな・・・
ほら!こうやったまんま後ろへ下がれ・・・
そうそうもっともっと!どんどん下がれ!どんどん下がれ!
もっともっと~~!!
よ~し!!止まれ!!まだ離すなよ?
今風がきたらな、おとっつあんが「しのふのみ」って言うから、そしたら離すんだぞ?
いいか?
あっそこだめだ上から枝が出てっからよ、そのまんま凧上がると糸が引っ掛かっちまう・・・
もっとこっちへ、もっとこっちへ寄れ!もっとこっちへ寄れってんだよ!!
どっちおとっつあん、こっち?こっち?こっち?
こっちだっつんてんだろうが!枝が出てんだこっから!
分かるだろ!?そうだそういうこともっとこっち寄れ!
おっ!風が吹いてきたぞ!吹いてきた!
しのふのみ!!離せっ!
それっ!!
うううっとおおお!!!来たがったああ!!
ほ~らほらほらほら・・・いい風が吹いてやがるよ!
うぇ~~~っと!!ほ~~~っと!!あっ!おっ!
金坊どうだ?おとっつあん凧あげうまいだろ?
おとっつあん凧あげんの上手いねえ・・・
生まれてはじめて尊敬した
一言多いんだよ・・・
俺ぁ子供の時分からよ!凧あげ大会がありゃあよ!いつだって一等賞!
おっ引きがいいねえ!!どうだい!おっとっとっと!
あぶねえあぶねえあぶねえ・・・
ほ~らっなあ!!これだよおめえ!!えっとんとんとんっ
あれ糸足りねえかなもう少し買っておきゃあよかったかな・・・
よっしゃあ~!くるくるくるくる~!!のくるっ!!
おとっつあんあたいにも貸して!!
ちょっと待て待て~待ってろ~~!!
今おとっつあんがなあ!ちゃんとあげたら持たしてやるから!!
いやあ!!いい引きだねえこりゃあ!
どうだい!!ふ~んふんのふ~んときやがって、これがまたふんのふんのふんだい!!
ねえおとっつあん!!あたいにも持たして!!
・・・
ねえ~~おとっつあん!!
うるせえなあ!!
こういうのは子供の持つものじゃねえんだ!!
あっち行ってろ!!
う~ん・・・
こんなことなら、おとっつあんなんか連れてくるんじゃなかった・・・
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