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昔から流行り廃りということを言いますが、人間ばかりではなく神・仏にもやはりありまして・・
もっとも神様といっても嫌がる神がありまして、疫病神、貧乏神、疱瘡神、死神なんという・・これはどうも人に歓迎されない神様で・・
じれったいねえこの人は!
わずかばかりの金を算段にできないで、ぼんやり帰ってきてどうするんだい!?
だって金がねえんだからしょうがねえ・・
おまえぐらい意気地なしはないよ!!
馬鹿!間抜け!とんちき!
豆腐の角に頭ぶつけて死んでおしまい!出ていけ!!
うるせえなぁ・・・
分かったよ!出てくよ!!
あんな強いかかあってのはないねえ本当に・・・
うち行きゃあ銭がねえし、ぎゃあぎゃあぎゃあ言われるし、どこ行ったって貸してくれねえし・・・
もう生きてんのが嫌になっちゃったな・・・死んじゃおうかな・・・
どう死のうかな・・・身を投げるのは嫌だな・・・
七つの時、井戸に落っこちたことがある・・・
あんな苦しい思いをするなら生きてる方がいい・・
ん?大きな木があるねえ・・・
あっ、首吊って死のう!これなら銭もいらねえし…
でも始めてやるからなぁ、どうするのかなあ・・首をくくるってのは・・・
教えてやろうか・・・
え?
死神を聞くなら「三遊亭圓生」
三遊亭圓生の落語「死神」は、独特なユーモアと緊張感が絶妙に交わる物語で、聞き手を最後まで引き込む名作です。人間の生死に対する鋭い洞察が光る一席。
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木の陰からひょっと出てきたのは、歳は八十以上にもなろうかとも思える瘦せぎすの老人・・・
頭に薄い白い毛がぽやっと生えて、鼠色の着物に前がはだけて、あばら骨一本一本数えれるくらいやせこけて、わら草履を履き、竹の杖をついたじいさんが・・
教えてやろう・・・
な、なんだなんだ!え?なんだい!誰だい!?
死神だよ・・・
わっ!!
ああ嫌だ・・ここへ来た途端急に死にたくなったんだ!
てめえのおかげだな?こん畜生め!そっち行け!!
まあそう邪険にするな・・・色々相談もあるから・・・
嫌だよ!相談なんぞ・・・
おいおい・・・待ちなよ・・・
逃げたってダメだ…
お前は歩いて逃げる、俺は風に乗ってふわっと飛ぶんだから、逃げられやしない・・
まあ色々話もあるからこっちへ来い・・・
何を言ってやがんだい!死神に相談なんぞしたってしょうがねえじゃねえか!
そう死神死神と邪険にするなよ、俺とお前には深い因縁がある・・・
まあそんなの言ったってわかりゃしねえがな・・・
だいぶお前困っているようだ・・・いいことを教えてやろう・・・
い、いいことって下請けかなんかさせようってんだろ?
何を言ってやがんだ・・・死神の下請けなんて商売があるか・・・
おめぇ医者になんな・・・
は?
医者になれって、俺ぁ脈のとり方ひとつだって知らねえんだぞ?
教えてやる・・・いいか?
病人の寝ている枕元か足元か、長患いをしていりゃあどっちかに死神がひとりはつく・・・
足元につくのはなんとかまだ脈がある、枕元に座るようになったらもうだめだ・・・
寿命がねえんだから手を付けなさんな・・・
そこでお前が呪文を唱える・・・
死神が離れれば嘘のようにけろっと治る・・・
立派な医者になれる・・・
じゅ、、呪文ってのは?
決してこんなこと人に言うなよ・・・
あじゃらかもくれん きゅうらいす てけれっつのぱ・・・
ポンポンっと手を二つ叩くんだ・・・
それをやられたらどうしても死神は離れなきゃいけねえことになってる・・・
ただし、もう一度言うが枕元にいる死神には手を付けるんじゃねえぞ・・・
やってみな・・・
あじゃらかもくれん?きゅうらいす?てけれっつのぱ?で
で手を二回?ポンポンっと・・・
あれ?死神さん?・・・いなくなっっちゃった・・・
呪文唱えたからいなくなったのか!いいことを教わった!
うちへ帰ってくるなり看板なんてものはありゃしない・・・
かまぼこ板かなんかに書いて表へ出しと、ものの十分経つか経たないかのうちに・・・
ごめんくださいまし!!
はい!
こちらはお医者様でいらっいますよね?
へ?
あぁそうか今は医者か・・・
そうです!医者ですよぉ!?
手前は日本橋の越前谷正兵衛と申します者の手代でございますが、主人が長病でございまして・・・
色々と先生に見ていただきましたが、もう手遅れだと申しますので、仕方がないそうなればと占いの人にお伺いしてみたところ・・・
北西に進路をとって最初に見た看板の先生が必ず治してくれるとお伺い致しましたのでやって参りました・・
じゃあ、あたしの所が最初かい?
ほぉ・・・じゃ、じゃあ行きましょうか
あ、あなたが先生?
ええ、先生ってのはどうも、あたくしなんです、へへへ・・
どうも見ると小汚いなりをしている・・・
とんでもない人を頼んでしまったと思ったが、まあ占いの通りだからしょうがない・・・
見せるだけならば構わないだろうということで案内をされ、奴さんもおっかなびっくり入ってみると・・・
いいあんばいに足元に死神が座っている・・・
これが主人?あ、そう・・・
いや、これは治るね!!
しかしどの先生もみな・・・
いやあきっと治りますよ!治せばお礼はいただけるんですね?
あたくしはね、医者ばかりでない・・・おまじないもちょっとやるんでちょっとお待ちください・・・
あじゃらかもくれんきゅうらいすてけれっつのぱ、ポンポンっ
死神がすっと離れると、今までうなっていた病人が・・・
ゴホっ・・ゴホっ・・お茶を持ってきてくれないか?
あぁ、頭から雲がすっと晴れたようだ・・・
腹が減ってきたが何か食いたいな・・・
先生!主人が何か食べたいと申しておりますが、やはりおかゆなんぞから・・・
いやあなんでもいいよ、うな丼でも天丼でも構わないから・・・
え?お薬?あぁ、ちょっといらっしゃい!
うちへ連れて来ても、何にもありゃあしない・・・
台所を見回すと、大根の葉っぱがありましたから、こいつをすりまして・・・
どうも、お待たせしました、これお薬
こ、これは煎じるんでございますか?
あ・・あぁ・・まあ口に入ればどうでも構わないんだ・・・
ずいぶんといいかげんな・・・
この薬を煎じて飲ませてみるってとケロケロっと病人が治る・・
こりゃあどうも不思議だ、あの先生はご名医だという評判であっちからもこっちからもいいあんばいにみんな足元の方に座っている・・・
その中でごくたまに枕元に座っている・・・
あぁ・・・こりゃあもうダメです、寿命が尽きてるからお諦めなさい・・・
出るか出ないかのうちに息を引き取るという・・・
今までは裏長屋でくすぶっていたやつが邸宅を構え、着る物は着る、うまいものは食う・・・
そうなるってとこじわの寄った女房は面白くないからってんで、若いちょっとおつな女なんかをおいて、どんちゃん騒ぎ・・・うちの方にも帰らない・・
女房はやきもちを妬いてぎゃあぎゃあ言う・・・
ああもうかかあなんざいらないってんで子供と金を預けて別れてしまう・・・
ねえ先生ぇ、上方見物にいっぺん行きたいと思っているですよ・・・
じゃあ、どうせならうちをたたんでいこう!
うちをたたんで金にして、向こうへ金のあるのに任せてあっちこっちと贅沢三昧歩いたが・・・
金というのは使えば無くなってしまいますから、女の方もいなくなるし、奴さんぼんやり帰ってきたが、また医者をやれば金ができるだろうと一戸を構えて待ち構えたが、どうしたことかまるっきり患者が来ない・・・
こっちから聞いて歩くわけにもいかず、たまたま来た患者の所へ行ってみるってと枕元に座っているんですからこれはお礼も取れないわけで・・・
そのうち麹町五丁目で伊勢家田衛門というそう当時指折りの金持ちでございます・・・
どうかひとつ先生に見ていただきたいってんで、のりこんでみると、あいかわらず枕元へどてんと座っている・・・
あぁ・・だめだこりゃあ・・この病人は助からない、諦めた方がいい
なんとか!なんとかひとつ!先生にお骨を折っていただきたいんです!!
骨を折ったって治らないものはしょうがない・・・
いかがでございましょう・・・
五千両まではひとつお礼を致しますが・・・
金をもらったところで助からないものは助からないんだよ!諦めておくれ!
では・・いかがでございましょう・・・
例えひと月でもよろしいのです・・・
寿命を延ばしていただきましたら一万両までのお礼はしたいと思っております・・
い、一万両!?
さぁ・・・そうなると助けたいねぇ・・・
う~ん・・・どうしたもんか・・・
ん、えっとね・・・
病人の寝ているとこの四隅に一人ずつ気の利いた奴を置いてね、あたしがポンっと膝を叩く・・・
途端にすっと、足元が枕元、枕元が足元になるように布団をくるっとまわしておくれ?
よろしゅうございます!
手筈を整えて、様子を見ている・・
夜が更けるにしたがって死神の目が異様に輝いてくる・・・
そうすると病人がう~んう~ん・・・という苦しみ・・・
そのうちに夜が明けて、だんだん昼近くになりまして・・
死神の方でもだんだんと疲れてきたと見えてこっくりこっくりと居眠りを始めた・・・
ここだ!と目くばせをしてポンっと膝を叩くと布団をくるっとまわして
あじゃらかもくれん きゅうらいす てけれっつのぱ!パンパン!!
死神の驚いたのなんのって・・・
わぁ~っと飛び上がってすぅ~っと消えるってと、病人がたちまち元気になるという・・・
はぁ~ありがとうございます!
さっそく金が届いたというので、奴さん一杯飲んでおりまして
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いやぁありがてえありがてえ・・・
やっぱり人間てのは苦しいときは知恵が出るっていうが本当だな・・・
苦し紛れに出たがいい知恵だな・・・
ふふふっ・・・よくあんな知恵が出たもんだ・・・
それにしてもあの死神の驚いた顔!傑作だったなぁ・・・
ぎゃあ!ってんだ、ふふふふ!
馬鹿野郎・・・なぜあんな馬鹿な真似をするんだ・・・
へ?
あら!どうもお久しぶり!
なにが久しぶりだ・・・
まさかてめえ俺のことを忘れていやあしねえだろうな・・・
いやいやいや!そんなまさか!
あなたのおかげでずいぶんと助けられた、儲けさせていただきましたよ!
へへっ、どうもすいませんね
なにがすいませんだ・・・
あんな馬鹿をして、俺はおかげでゲンボウになっちまった・・・
っ?なんすかゲンポウって?
月給を減らされたんだ・・・
へ?・・へへへっ・・そりゃあどうも失礼を致しました・・・
えっへへ・・・
それじゃああたくしはもらった金があるから、そのうちのいくらかお前さんにやるからさ・・・
それで勘弁しておくれよ、ねっ?
なにをいってやがんだ・・・まあやっちまったことはしょうがねえ・・・
俺と一緒にきな・・・
俺と一緒に来いってんだ!!
やめてくださいよぉ~・・・
一緒に来い来いって、なんか死神がたくさんいるところに連れてかれて吊るしあげかなんかにしようってんだろ?
やだよぉ勘弁してくれよぉ!ねっ?金は出すから
いいから来い・・・俺と一緒に来い・・・
来いったってどこに行くんだよ?
ここを降りるんだ・・・
え?
ここを降りな・・・
な、なんですか!いつの間に!
いいから降りな・・・
ねえ!金は半分あげるよ?
だからさ、山分けにして、無罪放免!いいでしょ?
いいから降りろ!!
降りろったってこんな薄暗くて気味の悪いところへ・・・
大丈夫だから、俺の杖につかまって降りてこい・・・
杖につかまってって・・・
おおっと、ちょちょっ・・まっ、待ってくださいよ!そんなに引っ張ったら危ないよ!
びくびくするこたぁねえ!さっさと降りろ、さっさと!
ほれ、ここをみな・・・
へ?
あらっ!まあずいぶんロウソクがどっさりついて・・・
なんですここは?
これはみんな人の寿命だよ・・・
はぁ~なるほど!
昔から人の寿命はロウソクの火のようだなんて例えは聞きますけれども、ずいぶんどっさりあるもんですねえ!
長いのや短いの、色んなのがある・・・
あ!こんなところにロウがたまってこれ・・・おそろしくこう暗くなってるのがありますねえ!
そういうのは患っている・・・
そのロウをはらって炎がすぅっと真っすぐに立つようになるとこれは病気が治る・・
なるほど!患ってるんですか、このロウが溜まってんのは!
はぁ・・ずいぶん色んなのがありますねえ・・・
あ!これはずいぶん長くて威勢よく燃えてますねえ!
それはお前の倅だ・・・
はぁ!奴は生意気なんですねえ!
へぇ~まだまだ長生きするぞこりゃあ!
あ!その隣に半分くらいだけど威勢よく燃えてるのがありますねえ!
それはお前の元のかみさんだよ・・・
あぁ!かかあか・・・あいつも長生きするんだねえ・・・
あ!ちょっとちょっと!
ここにこれっばかりになって消えそうになってるのがありますね?
お前の寿命だよ・・・
え?だ、だってこれ今にも消えそうじゃないか!
消えそうだ・・・
消える途端に命はない・・・
もうじき死ぬぞ・・・
おめえさん始めて会ったとき、おめえの寿命はまだ先だってそう言ったじゃねえか!
嘘なのかいあれは!
俺は決して嘘はつかねえ・・・
嘘はつかねえったって今にも消えそうじゃねえか!
お前の本来の寿命はこっちにある・・・
半分より長く威勢よく燃えているのがお前の寿命なんだ・・・
お前は金に目がくらんで寿命をとっかえたんだ・・・
ふっふっふ・・お気の毒に・・もうじき死ぬよ・・
そんな・・・んなこと知らねえから取っ替えちゃったんだ・・・
じゃ、じゃあ金はもういいよ、ぜ、全部やるから!
ね?だからその長いやつに元のように寿命取っ替えておくれ!
もうだめだ・・・
もうだめだなんて言わないでさぁ!やっておくれよ!
いっぺん取り替えたものはもう二度とは元に戻らない・・・
黙って死にな・・・
そ、そんな不人情なことを言わないでさぁ!
しいちゃん頼むよ!しいちゃん・・ねっ・・・
後生だからさ、金は全部やるからさ!
しょうがねえ男だ・・・
ここに灯しかけがある・・・
これにその消えかかっている炎を移し変えてみろ・・・
うまくつなげれば、助かるかもしれん・・・
そうですか!すいませんねえ・・ありがとう・・・
早くしないと消えるよ・・・
消えるったってお前さんねぇ、こんなに小さくなっているんだから・・こ・・・
どうした・・なにを震てる・・震えるな・・・
ふ、震えてやしないよ!ただ、か、体が細かに動くんだからしょうがねえやな!
震えると・・・
消えるよ・・・
消えれば命はない・・・
早くしな・・・
だ、黙ってくれよぉ・・・
お前さんが消えるよ消えるよって言うからこっちは余計に震えてうまくいかねえんだ・・
早くしな・・・消えるよ・・・
ほら・・早くしな・・・
ふふ・・ふふふっふふ・・・
ほら早くしろ早くしろ・・ほらほらほら・・・
消えるぞ消えるぞ・・ほらほら・・・
ほ~~ら・・・・
消えた・・・
・・・
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