音声を聞きながら、台本をお読み頂けます。
江戸時代では夜になりますってと二八そばなんてものが流行りましたが、どういう訳で二八そばなんて名前になったかってぇますと、 それはその頃の商いが二八の一六文だったなんて言います・・・
もう一説ございます・・・
そばはそば粉だけではそばにならない・・・
そば粉を八分、うどん粉を二分使いますところから、二八そばという・・・
どっちが本当かは分かりませんがどうやら銭勘定の方が本当のようでございます・・・
その頃はもうみな二八の十六文と決まっておりました・・・
夜にくりだす蕎麦屋なんてのは担ぎます上の所に屋根がありまして、軒下に風鈴がぶら下がってる・・・
この風鈴が担ぐ腰の振りようでもって、チンリンチンリンチンリンチンリン・・・音を立てます・・・
親ばかちゃんりん蕎麦屋の風鈴なんてものはこれから始まったってえますが、江戸の町を・・・
時そばを聞くなら「柳家小さん」
三代目柳家小さんが上方の時うどんを江戸噺として移植したのが「時そば」。その後、五代目柳家小さんの十八番として演じられ、人情味あふれる演技で、江戸時代の風情と笑いをたっぷり楽しめます。
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※フルは↑の赤いボタンから1か月間無料でご視聴頂けます。

そば~~~~~~~~~~~~~~

ちょっと待ってくれ蕎麦屋さん!

おう!何ができるんでい!?

え?花巻に卓袱(しっぽく)?

おう!そうかい!じゃあ卓袱熱くこしらえてもらおうかなぁ!

いやあそれにしても寒いなあ!

ええ・・お寒うござんすねぇ・・・

おらぁすっかり風邪ひいちゃったぁ!

へへ・・・どうもこのところ陽気が良くございませんからねえ・・・

まあ大したことはねえや!おめえんとこの熱いそば、か~っとたぐっちまってよ?

帰って横にでもなれば抜けちまうだろ!

だからひとつ熱くして頼むぜ!

へい・・よろしゅうござんす・・・

どうだい?蕎麦屋さん景気は?

ええ、どうも不景気で困ります

そうかい!まああんまり気にするなよ?

昔っからよく言うやつだよ!

悪いやつは必ずいいなんてこと言うもんなあ!

商売は商い(あきない)なんていうもんだ、飽きずにやらなくちゃいけねえやな!

うまいこといいますな!

商売は商いでもって飽きずにやらなくちゃいけないなんぞは・・・

いやそりゃあそうじゃねえかと思うってんだよ!

商売ってても色々あるけどよぉ!?色々手ぇ出してどうも上手くいかねえなんて
ぶーぶーぶーぶー言ってりゃあいいなんてもんじゃねえやな!

これだなって思ったらそれを離さずにいるってと、いつか芽吹くってもんじゃねえか!

本当だよ?商売ってのは飽きずにやらなくちゃいけないってのはこのことだよ!

お?お!?おめえんとこの行燈(あんどん)変わってんなあ!

へえ・・てまえ共は当たり屋と申しまして・・・

お!?当たり屋!?いいじゃねえか当たり屋なんて!

こちとら江戸っ子だ!縁起担ぐぜ!本当だよ!

それによ?大きな声じゃ言えねえけども、向こうでもってガラっポン!

勝負ってんで時々俺ぁ悪さするんだ!大当たりなんて嬉しいじゃねえかよ!

俺ぁ縁起担ぐわけじゃねえけどよ!

夜分に表出てつっつっつっって歩いてるときにおめえんとこの行燈見たら、どれだけ腹一杯だろうが、食欲なかろうが立ち寄るからな?

そのつもりでいてくれ?

へえ・・よろしくごひいきに・・・

いやぁ、ごひいきってことでもねえけどよぉ!

へい、親方お待ちどう様でございます

え?早えなおい・・・

ちょいと無駄話してる間に親方お待ちどう様です、嬉しいねえおい!

こちとら江戸っ子だい!気が短えんだよ!?

あつらえたもんが中々出てこねえ、催促してやっと持ってくるなんてのは、うめえもんも不味くなっちゃうもんな!

本当だよ?ちょいと無駄話してる間に『へい、親方お待ちどうさん』・・・

これだよ!

お?おめえんとこ、この割りばし使ってんの?

大したもんだんねぇ~・・・

この界隈ずいぶん蕎麦屋もでるけどねえ・・・おめえんとこだけだよ、この割りばし使ってんのは!

大概の所は割りばしってても、すでに割れてんだよ!?

誰が使ったかも分からねえもんを使わされるってのは心持が悪いやな!

いいどんぶりだねえ・・・

物は器で食わせろなんて言うけども本当だぜ?

中身が少々不味くったってどんぶりがいいってとうまく食えるからなあ!

こりゃあいいどんぶりだぁ!

うはぁ~!いいにおいだこりゃあねえ!

俺ぁよ!蕎麦っ食いだろ?

蕎麦のにおいだけでうめえか不味いか分かっちまうんだから!

本当だよ!?俺ぁ蕎麦っ食いだからよぉ!

ほらいいにおいだ!

ふ~ふ~・・・ふ~・・・

ずずっ(つゆを飲む音)・・・

はぁぁ~~・・・

いいつゆ加減だねぇ・・おい・・だしが効いてるよ?

かつお節いれたろぉ!?たいしたもんだこりゃあ!

ふ~ふ~・・・

ずずっ・・・

はぁぁ~~

いいつゆ加減だ、まったくなあ!つゆがうま過ぎるってと蕎麦食う前につゆなくなっちまうよ!?

うわぁっとぉ!!見ろこれ!!

まあ見ろったっておめえがこしらえたんだから改めて見るこたぁねえけどよ!?

蕎麦ってのはこういう風に細くなくっちゃあいけねえやな!

中にはうどんじゃねえかって思うくらい太い蕎麦があるけどな?あんなのは江戸っ子の食うもんじゃねえやな!

蕎麦ってのはこう、つ~~っと細いところがいいんだから!嬉しくなっちゃうなぁもう!

ふ~~・・ふ~ふふ~~~・・・

ずず~ずるっ!ずずず~(蕎麦をすする音)・・・

・・・

こしが効いててうまい蕎麦だねえ!こりゃあ!

ぽきぽきするしこしこするってえのはまさにこのことだよ!

嬉しいねえ!江戸っ子だよ!おめえも江戸っ子だろ?ははっ!!

ふ~ふ~ふ~・・・

ずる~ずるずるっ!ずずずず~~~・・・

はぁ~・・・ずずず~~ずず~・・

おい!ずいぶんちくわ厚く切ったじゃねえかおい!

いいのか?こんなに厚く切っちゃってよぉ!

大概どこだって薄っぺらいよ?あんなものは痛々しくっていけねえやな!

こう厚く切ってあるってとぶつぶつっと音が聞こえるようでいいじゃねえか!

嬉しいなあ!江戸っ子だもんなぁ!

本物じゃねえかこりゃあ!本物のちくわ使ってんの!?

驚いたねえ!大概どこだって「ふ」だよ「ふ」!

病人じゃああるめえし、「ふ」なんておかしくって食えねえってんだ!

本物使ってこれだけぶつぶつっと厚く切ってるってのは嬉しくなっちゃうなあ!

驚いっちゃたよぉ!夜鷹そばでこんな上等なものめったにあるもんじゃ・・

ふ~ふ~~!!ずずっず~!ずずずっ!ずっ・・・

・・・はぁ~~~・・・はぁ~~・・・

おう!蕎麦屋さん!俺もう一杯と言いてえんだけどよ!

脇でもって不味いの食らっちゃったんだ!

おめえんとこは口直しだぜ!すまねえけども一杯で勘弁してくれ!

へえ、よろしゅうございます・・・

いくらだい!?

十六文頂戴いたします

十六文?ああそうかい!銭細けえんだ構わねえか?ほらいくよ!?

一(ひい)・・二(ふう)・・三(みい)・四(よう)・・五(いつ)
・・六(むう)・・七(なな)・・八(やあ)・・・

おう!!今何時(なんどき)でい!

九つです

おうそうか!!

十、十一、十二、十三,十四,十五、十六・・・
と数えるってとほいっと行っちまった・・・
これを、脇で突っ立って見ていたやつがございまして・・・
時そばを聞くなら「柳家小さん」
三代目柳家小さんが上方の時うどんを江戸噺として移植したのが「時そば」。その後、五代目柳家小さんの十八番として演じられ、人情味あふれる演技で、江戸時代の風情と笑いをたっぷり楽しめます。
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驚いたねあの野郎は!べらべらべらべら喋りやがって!

男のおしゃべりはみっともねえなんていうぐらいなもんだ!男の面汚しだぜ本当に!

それもいいけど、はなからしまいまでおめえ蕎麦屋褒め倒してやがんだから・・

色々なこと言ってやがったなあ・・・

箸は割りばしで機嫌を取り、ちくわは本物で厚く切れ・・・

何を言ってやがんでい!

ああ次から次へと褒めるところを見るってと、あの野郎そのうち食い逃げするんじゃねえかと思ったら銭払って行きやがったよ!?

ますます勘弁出来ねえ野郎だあいつは・・・

江戸っ子じゃねえな!追っかけてって張り倒してやろうかと思ったよ!

一杯食おうが半分食おうが客の勝手だよ!?

不味いから半分残したら蕎麦屋がすまねえと思えばいいんでい!何も謝るこたぁねえや!

「すまねえけども一杯で勘弁してくれ」

「よろしゅうございます・・・」

何がよろしゅうございますだ!

「いくらだ?」「十六文・・・」

笑わせやがらぁ!十六文ってのは天下で決まってる値段じゃあねえか!

いちいち聞くこたぁねえんだあんなものは!!

銭は細かくったって構わねえか?って細かくったってでかくったってよ!

同じ銭じゃねえか!いちいちくどくど言うこたぁねえじゃねえか!!

またその銭蕎麦屋の大きな手にもってって、ひとつずつ声をかけて丁寧に勘定してやがったね!

一(ひい)・・二(ふう)・・三(みい)・四(よう)・・五(いつ)・・六(むう)・・七(なな)・・八(やあ)・・・

あんなとこでもって時聞いてやがんだから!

蕎麦屋さん今何時でい?九つです。十・・十一・・・・

・・・あれ?

おかしいんじゃねえか?

あれぇ!?

一(ひい)・・二(ふう)・・三(みい)・四(よう)・・五(いつ)
・・六(むう)・・七(なな)・・八(やあ)・・・

今何時だ。九つです。十・・・

あ、やったねあいつぁ!!

やりましたねえ!偉いねあいつぁ!

江戸っ子だねあいつぁ!

こりゃあ驚いた!こりゃあ蕎麦屋生涯気づかないよ!

ははははっ!

俺もやろう!
その晩はあいにく、細かい銭がございませんで、あくる晩揃えておくってと奴(やっこ)さん待ちかねて表へ飛び出したってやつで・・・

そば~~~~~~~~~~~~~

お~い!蕎麦屋さ~んちょいと待ってくれ~!

蕎麦屋さ~ん!蕎麦屋さ~ん!お~~い!!

お・・お~~い!!蕎麦屋さん!

おう!!何だよ!ちょっと待てお前!俺さっきから呼んでんじゃねえか!

何が出来んの?花巻に卓袱?卓袱熱くこしらえてもらおうかなぁ!

それにしても今日は寒いなぁ!

え~今晩はだいぶお暖かいようでございます

え?あ、そうか・・・

今晩は暖けえけどよ、あの昨晩!昨晩は寒かったなあ!

ええ、昨晩は大変にお寒うございました

俺ぁすっかり風邪ひいちまったよ!

あたくしもひきました

いや俺ぁよすっかり風邪ひいちゃった!

いやあたくしもひきました

いや俺がひいたっつてんだよこの野郎!強情な奴だなこいつぁ!

おめえに熱いのこしらえてもらって、それをカッ!っとたぐっちまって家帰って横になってりゃ抜けるだろってんでひとつ熱くして頼むぜ!

へい、よろしゅうございます・・・

どうだい蕎麦屋さん景気は!?

ええ左様でございますなぁ!

世間様ではみなさん不景気だ不景気だとおこぼしでございますが手前どもでは多くお得意様がございましてな?

おかげ様で大変うまくやっております!

・・・ああそう・・・そらぁよかったねぇ・・

そらぁとってもいいんじゃないの?

でもまあそういうこと気にするこたぁねえやねえ!?昔っからよく言うんでい!

いいやつは必ず悪いなんてこと・・・

こりゃあ言わねえほうがよかったな・・・

まあ・・まあいいや!

でもよ!商売はよ!?飽きずにやらなくちゃいけねえってことだい!

商売は飽きずにやらなくちゃいけねえ!!

へえ、商い(あきない)って言いますからなぁ・・

・・・そうですねえ・・へえ~~・・・

・・・う~んと・・・おめえんとこの行燈は~

あれぇ?

おめぇんとこの行燈、的に矢が当たってねえな・・・

おめえんとこの行燈、矢が二本書いてあるねえ!

へえ、手前どもは「やや」と申しまして

ややぁ!?なんだか俺やになっちゃったなあ!

まあでもいいや、二本書いてあるってのはね?一本ってのはこれぁ可哀想だよ!第一強情でいけねえや!

「や」!ってのはこれはいけねえや!

「やや」・・いいなぁ「やや」は!いいよぉ!?

どうでい?今度会うとき、もう一本足しといてくれよ?

そうするってと賑やかになっていいよおめえ!

「ややや」!なんてよ!?いいじゃねえかこれ!

おめえんとこの行燈見たら腹一杯だろうが食欲なかろうが食いに行くからそのつもりでいてくれ?

へい、よろしくごひいきに・・・

いやぁ!ごひいきってほどのことは出来ねえけどさ!

本当だぜおい!!ははは!はは・・は・・

・・・はぁ・・

・・・

・・・まだか?

へ?

いや、まだ出来ねえのかよ?

あ、どうもあいすいません・・・

今うっかりしておりましたら火が消えてしまいました・・・

今火をおこしておりますからそのうち出来上がります

おい冗談じゃないよおめえ!こちとら江戸っ子だい!気が短えんだい!!

あつらえたもんが中々出てこねえ!

催促してやっと持ってくるってのはうめえもんも不味くなっちゃう・・・けどよぉ!

あの~~・・・あぁ・・・まあいいやっ・・・

江戸っ子ったって色々あるもんな!気の長えのもあれば気の短えのもあるしよ!

俺はもうごく気の長え方の江戸っ子だからよぉ!もうゆっくりやってくれい!

はぁ・・・

・・・

おい!それにしてもちょいと長えんじゃねえか!?

へい親方お待ちどう様です

そうそうそうそう!これだよ!これ!

ちょいと無駄話してる間に「親方お待ちどう様です」これだぁな!

だけどおめえんとこは偉いと思ってさ!

ずいぶんこの界隈蕎麦屋もあるけどな?割りばし使ってんのおめえんとこだけだい!

大概割りばしっつってもすでに割れてんだよ!?

そんな割れた箸誰が・・・

あぁ・・割れてんのか・・・

まあいいや・・・この方が割る世話がなくていいもんな!

本当に客に骨折りかけさせねえなんて大したもんだよおめえんとこは!優しい心遣いってもんだよぉ!

おい・・おい!!

先濡れてんじゃねえかよ・・・

誰か食ったんじゃねえかこれで!

そうじゃありません?

あ~あ、ねぎのきれっぱしなんかついてやがる・・・

まあいいや拭いときゃ一緒だこんなもんは!なあ!

だけど物は器で食わせろなんて言うけども全くだ!

中身が少々不味くったってどんぶりがいいってとうまく食えるからよぉ!

そうなるってとおめえんとこのどんぶりは・・・

ひびだらけじゃねえかよおい・・・ただのひびならともかく、ふちが欠けてるわ・・・

こんなもんでつゆ飲んでうっかり口切っちまったらどうすんだよおめえ・・・

いいかげんしろよ・・・

まあいいんだよこういうもんは、向こうにまわしちゃえ向こうに・・・

あれ?回したらまた出てきやがった・・・

あれ?あれぇ!

ふちがまたまんべんなく欠けてんねえ!重宝などんぶりだぁ!

どんぶりにもノコギリにも使えるってんだ!本当に・・・

無駄がなくっていいやな・・・

俺ぁ蕎麦食いに来たんだ、どんぶりかじりに来たわけじゃねえからよ!?

だけど蕎麦の匂いだよ?匂い匂い・・・俺蕎麦っ食いだからよ!

匂い嗅いだだけでうまいか不味いか分かっちゃうよ?だって俺ぁ蕎麦っ食いだもん・・

これだよ!この匂いはだしにかつお節使ってんな?匂い嗅げばす~ぐ分かっちゃうんだから!

ふ~ふ~・・・ずずっ(つゆを飲む音)・・・

・・・

ちょっと湯入れてもらおうかねえ・・・

あ~!びっくりした!口の中で何が起きちゃったんだよ!

甘い辛いなんていうけどもこれ口が曲がっちゃうぜ!

・・・まあいいんだよ!

俺別につゆ飲みに来たわけじゃねえからよ!!

おめえ蕎麦屋だもんな!つゆ屋じゃねえもんな!

蕎麦だよ蕎麦!!細い蕎麦が値打ちだわな!

江戸っ子だもんこちとら!中にはうどんじゃねえかと思うような太え蕎麦があるけどよ!

ええ?そんなもの・・・

うどんかこれは!?

これうどんにしたってちょっと太すぎるぜ?

まあいいや!こっちの方が噛みがいがあっていいやなあ!

だけどなあ!ぽきぽきするシコシコする、これだよぉなあ!!

こちとら江戸っ子だべらぼうめえ!!

ふ~ふ~ふ~・・・・ずるずずず~~!!!

ふずずる~・・じゅるじゅるるる

・・・ごほ!ごほっごほっ!!

一気にすするもんじゃ・・・ごほ!!ごほっ!!!

こんな太いそば・・ごほっ・・・

じゅるじゅるるるる・・・じゅるるるる!!・・

べとべとだよこりゃあ!

・・・まあいいや!この方が噛む世話がなくっていいやな!

腹具合の悪い時にはごくいい蕎麦だよおい!

俺ぁ腹具合の悪い時はおめえのこと探すからよぉ!

だけど・・これ驚いたなぁ本当に・・・

・・う~ん・・・はぁ・・・

じゅるじゅるるる・・・じゅるるるる!!・・・

おう!おめえちくわ入れたか?

入れた?

入ってますったって俺実はさっきから探してたんだけどよぉ!いくら探したってねえじゃねえか!

どこにあんだよぉ!忘れたんじゃねえか!?

確かに入れました?本当!?

おかしいなぁ・・おめえ入れ・・・

あった~!あったよ~!

俺ぁてっきりどんぶりの柄かと思っちゃったよ・・・

よくまぁこう薄く切ったねぇおい!これ包丁で切ったんじゃねえカンナで削ったんだろう!?

包丁で切りましたぁ!?

いい腕だねぇ!!

見ろ!向こうに月が透いて見えるじゃねえか!

だけどねぇ、いいんだおめえんとこいくら薄くったって!大概世間では「ふ」使ってんだ「ふ」!

あんなもんは病人の食うもんだ!おかしくって食えるかってんだ!

こちとら江戸っ子だぁ!それへいくってとお前のとこは本物だわな!な?

・・・

ふだな!!

本物のふだなこれは!!俺ずいぶん食ってなかった本物のふは!

俺ぁ近頃ふが食いてえなと思ってたんだ!ちょうどよかったよ!?

実をいうと俺病人だから・・・

なんだか情けなくなってきちゃったなぁ・・・

じゅる~!!じゅるじゅじゅっ!!・・・はぁ~~あ~~・・・・

じゅるるる~じゅっじゅるっ!・・・

な~んだこりゃあ・・・もう嫌んなっちゃったぁ!!

俺よ!もう一杯と言いてえんだけど脇でもって不味いの食らっちゃったんだ!

おめえんとこは口直しだい! 悪いんだけど一杯で勘弁してくれ!

へい、よろしゅうござんす

いくらでい?

十六文頂戴します

十六文?

これこれこれこれ!!十六文十六文!

こっち手ぇ出してくれ!銭細けえんだ勘弁してくれ!?

いくよ!?

一(ひい)・・二(ふ)・・三(み)・・四(よ)・・五(いつ)
・・六(む)・・七(なな)・・八(や)

今何時だぁ!?

四つです

五(いつ)!六(む)!七(なな)!八(や)・・・


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