ピンチの時、緊急事態の時、知恵がある人があると本当に助かりますな・・・
頼りになるとも言うんでしょうか・・・
ここはこうしてああして・・・と手をまわしてくれるのを見ると『まあ本当に頼りになるわ~』なんて女性が男性に惹かれちゃったりしそうなもんですが・・・
昔の方でも、やはり何かあった時には頼れる・知恵のある方というのが重宝されたそうでございますけれども・・・
風呂敷を聞くなら「古今亭志ん生」
古今亭志ん生の名演「風呂敷」は、日常の中に潜む笑いと人情が織り交ざった一席です。志ん生独特の語り口が、シンプルな日常の風景に深みを与え、聴く人を引き込む一作。
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もう~兄さんお願いしますよ、助けてくださいな、お願いします!

大変なんですよぉ~!お願いします!大変なんですから~!

なんだよお前入ってくるなりうるさいなぁ・・・

どうしてそうけたたましく入ってくるの?

仮にもお前は女だよ?もうちょっとおしとやかに入ってきたらどうなんだ?

後ろを見てみな後ろを・・・お前の脱いだ下駄だよ・・・

片方はちゃんと玄関の中へ入ってるけど、もう片方は道の真ん中にあるじゃねえか・・・

どういう歩幅だ!お前の歩幅は!

お前のようなやつを出したいねえ、次のオリンピックの三段跳びに・・・

だって大変なんですもん兄さん~!

分かってるよぉ~お前大変大変たって、いつもと同じように犬も食わない夫婦喧嘩なんだろ?

いやそうじゃありませんよ?そりゃ確かにいつもは犬も食わない夫婦喧嘩ですよ?

でも今日のはちょっと違うと思うんです・・・

今日のはちょっと犬も考えると思いますよ?

ちょっとだけでも食べてみようかな?と思うようなそんな揉め事なんですよ!

変なこと言うねぇ・・・なんだい?

実はね?うちの人がちょっと仲間の寄り合いがあるからと言うので早くに横浜へ出掛けたんです・・・

横浜でもって遅くなるだろうからお前は先に寝てていいよって言われたんで

あたし夕方から湯へ行ってね、ゆ~っくりうちで茶飲んでたんです・・・

そしたらそこへね?

あの新(しん)さんが訪ねてきたんですよ、うちの人を・・・

ほぉ、あの色男の新公が?それでどうした?

でね?いないと分かったら帰るって言うから

「そんなせっかく来たんだからお茶ぐらい飲んでったらどう?」

って言って二人っきりでお茶飲んでたんですよ・・・

そしたらさっきの夕立でしょ?

もうね~、せっかく綺麗にした玄関に吹き込まれるのが嫌だったから、降りて行って戸を締めましてね?

上がりなおそうとした時に!うちの人がドンドンドンドーン!

『俺だ~!今帰った~!』って酔っ払って帰って来るじゃありませんか~!

あたしもう驚いちゃって~!

おいよせよ・・・亭主が帰ってきたんだろ?

亭主が帰ってきたときに驚いてたんじゃ生涯驚いてないといけねえぞ?

だってぇ~遅くなる遅くなるって言ってた亭主が早く帰って来たんですから驚くじゃありませんか~!

またお前はわけの分かんねえことを言うんだな・・・

遅くなる遅くなると言っていた亭主が早く帰ってきたら普通は喜べよお前・・・

驚くというのは、ちょっと行ってくると言って3年帰らないのを驚くって言うんだぞ?

だって兄さん分かってるじゃありませんか~!

もう~!うちの人のやきもち妬き~!

もう~そんじゃそこらのやきもち妬きじゃありませんよ~!

あたしがちょっと立ち話してるだけでも、かぁ~!っと怒っちゃいますしね?

隣のポチがオスというだけで、頭撫でたぐらいで三日も口をきいてもらえないのよ?

そういう人なのよ~!

そういう人がね?

あの色男の新さんを置いて二人っきりでお茶を飲んでたなんてことが分かったら、なんにもありゃしませんよ~!?

なんにもありゃしませんけれども、もうどんな目に遭うか分からないから

すぐにね、新さんを押し入れに隠してうちの人を入れて、うちの人が寝てから新さんを押し入れからそ~っと逃がそうと思ってたら・・・

またうちの人がその押し入れの前にあぐらをかいて寝ないのよ~!

もう新さんだって生き物ですからね、中で酸欠になっちゃったり、あくびもすれば、おならもします・・・

それにお腹が空いてくるでしょ?

お腹が空いて何か作りたいと思ったって、うちの押し入れ台所がないのよ~!

くだらねえこと言ってるなお前は・・・

それでどうした?

それでお酒すぐに買ってくるからというので、とりあえずうちを飛び出して来て

兄さんの所へ来たんですけれどもお願いしますよ、ねぇ~!

新さん助けてあげてくださいな~!なんとかしてくださいな・・・

うるせえなぁ本当にまぁ・・・

だからおめえは浅はかだってんだい!

えぇ?ここ麹町ですよ?

誰が赤坂だって言ったんだよ!

浅はかだって!いいか?お前がそのつもりでいても、な?

何にも疑いのないことをしているつもりでも、周りから見るってと、人はどう思ってるか分からないということが分からないのかい?

李下(りか)に冠を正さず、瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れずってなぁ・・・

へぇ~なんの呪文です?

呪文じゃねえよ・・・

まあまあ、とにかく梨畑でもって被り物を直してるつもりでも、遠くから見ると梨を盗んでるように見えるってことだよ

李下(りか)に冠を正さず、瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れず、分からんねぇかな本当にまあ・・・

だからつまりこういうことだ、え~湯舟で体を揺すらず、酔って電柱の前にとどまらずってんだ・・・

なんですそれ?

だからな?

熱い湯の中に入ってちょっと自分が体を動かしたつもりでも

外から見てると『あ、あいつはお湯の中でおしっこをしたな』と思われるということだ・・・

酔って電柱の前で立っているだけでも

お巡りさんから見ると『あれは立ち小便をした後じゃないか』と思うというような・・・

そういう自分がしたことを周りが違うって・・・

まあまあそんなことはどうでもいいよ、分かったよ・・・

酒を買ってくるって出てきたのか?分かった分かった・・・

まあそれだったらな、先に帰ってな・・・

先に帰ってなって兄さん!一緒に行ってくださいな~!

一緒に行ってくださいなって一緒に行けるわけないだろう馬鹿野郎!

一緒に行きゃ必ずなんか言われるよ?

『なんだって二人でもって来るんだ?おめえたちまさかデキてんじゃねえのか?』

とかなんだかんだ言われるからお前は先に行ってな!

後から俺がなんとかするから!

本当ですね?お願いします、お願いします・・・

本当にお願いします・・・

やめろそうやって、手をついて頭を下げるのは・・・

毎回来るたんびに同じところに手をつくから見ろお前!

畳が手形の分だけへこんじゃったよ・・・

この前そこでつまづいたぞ俺は・・・

まあまあいいから!行ってろ行ってろ!行ってろってんだ!

本当にまあしょうがねえな・・・人をなんだと思ってやがんのかねぇ・・・

困ることがあるってとすぐに俺んとこに来やがる・・・

まあいいや・・・今日の所はこの風呂敷でもってなんとかするか・・・

おぉ?4、5軒前からまあ大きな声が聞こえるよ・・・

だいぶ酔ってやがんねぇあの野郎は・・・

あ!あの野郎、手を上げてやがる・・・

おい!よせ!止めろ!止めろ!殴ったりするんじゃないってんだ!

やめ・・・

mヴぉおえjrgvにrんfjvにうrじf・・・

おいおい何言ってんだおめえはよ・・・

なんなんだお前はよ!?

うぅぅぅ・・・あぁ!

おう・・・源さんか・・・源さん聞いてくれえい!

聞いてくれれば俺の怒らないのも分からないでもないよ!?

今日は俺はね?

これほど、うちの女房がわけの分からない女だと思ったことはないよ!?

ほぉ・・・どうしたい?

うん!今日俺はね?横浜の方へ仲間との寄り合いがあったから行ったんだよ・・・

思ったより早く終わって一杯ひっかけて帰って来た・・・

まだ夕暮れ時分だってのに、もう戸が閉まってやがんだよ!?

ドンドンドン!今帰ったぞ!と・・・

そしたらうちのかかあが戸を開けてまるで俺を親の仇でも見るような顔で!

『あんたぁ!ずいぶん早かったわねぇ!早かったからもう寝ましょ~!』

ってこんなこと言うんだよ・・・

これはどこの国の言葉かってんだよ・・・

遅かったからもう寝ましょってんなら分かぁる・・

『早かったからもう寝ましょ』って、こんなわけの分からない女はねえってんで

俺ぁもう急に機嫌が悪くなっちゃってさっきからずっと飲み続けてんだ・・・

あぁそうか、まあそらぁ機嫌がななめになるのも分からなくもねえなぁ・・・

でぇ~、源さんはどこ行ってたの~?

俺かい?俺はまあ友達のちょいと揉め事があったんで、それをまあおさめて

それでお前んちの前を通りかかったらおめえがでかい声出してやがるから・・・

これはいけねえなと思っておめえの家へ入って来たところでい・・・

はぁ~ん・・・揉め事?

ど、どういうもんなんだい面白いねえ・・・

いいよぉそんなこと・・・大したことはねえからよ・・・・・

んなこと言わねえでよぉ~人の揉め事ほど面白いことはないんだぁ・・・

教えてくれよ、ど、どういう揉め事?んだい面白いねえ・・・

酔ってるとしつこいねぇ・・・

いや今日俺の友達がよぉ、仲間の寄り合いがあるからってんで朝早くにな?

横浜の方に出掛けたんだよ・・・

えぇ?・・・似たような話だなぁ!

ん?あぁそういやそうだな・・・

それで遅くなるから先に寝てて構わねえぞって言われたから、かみさんはゆっくり湯に入って家で茶飲んでた・・・

そこへな?まあ友達というか、色男というかちょいと若いのが訪ねてきたんだ、その亭主を・・・

ところが亭主がいないから帰ろうとすると、まあいいじゃありませんか、お茶の一杯でもという時に、夕方の夕立だ

しょうがないから戸を閉めて、また上がりなおそうとした時に、そこの亭主が酔っ払って帰って来たってんだよ・・・

ほぉ~!そりゃまずいなそれはなぁ!それでどうしたんだい?

大変なやきもち妬きのその亭主にな?

これは見つかっちゃいけないというので、その色男を押し入れの中へ隠して!

それでもって亭主を中へ入れて寝かせようと思ったら・・・

その亭主が押し入れの前にあぐらをかいて、うだうだ言って寝ねぇってんだよ!・

たちのよくねえ野郎だなそいつは~・・・

はぁ~ん・・・で、どうしたの?

だからそいつをす~っと逃がして帰ってきたその帰り道だってんだよ・・・

ありぃ?そいつ逃がしたの?

押し入れにいた奴がいて、その前に男がいて、すごいねそりゃ・・・

ど、どうやって逃がしたの?

ねえねえ!だって聞きてえじゃねえかなぁ!

いやいやそんなのどうでもいいからよぉ!

俺に一杯飲ませてくれよ!

いひひ・・・じゃあさじゃあさ、それ聞かせてくれたら!

飲ませてやるからそれちょっと聞かせてもらいてえなぁ・・・

ったくもう酔ってると何だか訳がわかんねえなぁ・・・

聞きてえの?話せばいいの?飲ませてくれんの?

分かった分かった・・・じゃあな、早い話がこの風呂敷一枚だよ・・・

この風呂敷をだぁ~っとこう広げたと・・・

この一枚でもってなんとかしてきたんだ!

へぇ~!その風呂敷一枚でなんとかなったの?

ど、ど、どういう具合に?

ったくもうしょうがねえなぁ・・・

じゃあお前をな、仮にその亭主だとしようや、な?

この風呂敷をその亭主の頭の所にぱぁ~っと被せて四隅をもってだな、首んところを持って結わえたんだ・・・

そうすると前が見えないだろ?な?

そいつも見えないってそう言ってた・・・

でな?見えないというのを確認して!

俺が後ろの押し入れんとこをす~っと開けるってと・・・

その色男が中でぶるぶる震えてやがんだ・・・

出ろよ!出ろよ!早く出ろってんだ!

とまあこう言ってやったんだ俺がな?

そうすると這うようにして出て行くんだ・・・

忘れ物はねえのか?忘れ物はねえのかってんだ!

忘れ物があったら大変だからこう言ってんだ!ねえんだな!?まあねえならいいや・・・

とまあこういう風にも言ってやったんだ俺がな?

そうしたら忘れ物はねえようなんだなぁ・・・

いいよ!下駄なんて丁寧に履いてる場合じゃねえや!

手で持て!手で!いい、いい!挨拶なんていらねえからす~っと戸を開けて!

そうそうそう!いいから挨拶は!ピタッと閉めてけよ!?よしっ・・

とまあ、向こうが出て行ったのを確認してから、この風呂敷をぱぁ~っと取ったと!

まあこういうわけなんだ!

うめえことやりやがったなぁおい~!!驚いたなぁ!

それもさることながら、源さんおめえの話はうめえなぁ・・・

俺はね!あたかもその男がここを通ってったような気がしてならねえんだ!

それに空耳かなんか知らねえけど、戸が開いて閉まる音がまで聞こえたよぉ!

でも大した知恵だったとしても、それぐらいのことで隠れてた男を逃がされるような

亭主のつらが見てみたい!
風呂敷を聞くなら「古今亭志ん生」
古今亭志ん生の名演「風呂敷」は、日常の中に潜む笑いと人情が織り交ざった一席です。志ん生独特の語り口が、シンプルな日常の風景に深みを与え、聴く人を引き込む一作。
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