落語【替わり目】台本 吹き出し風

落語 台本

人力車しかなかったような時代には、酔っ払いの天下で、夜遅くなるってと足取りのおぼつかない酔っ払いが大きな声を張り上げながら現れたそうでございますが・・・  

替わり目を聞くなら「立川談志」

立川談志の「変わり目」は、酔っぱらいと女房、うどん屋が織りなすドタバタ劇を、鋭い言葉のセンスと独特の間で見事に描く。

言葉遊びが光るオチまでの展開が絶妙で、笑いの中に深い人間観察が感じられる一席です。談志ならではの味わい深い「変わり目」を堪能できる。

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酔っ払い
酔っ払い

さぁ〜!こんちくしょう〜!矢でも鉄砲でもなんでも来いってぇんだぁ〜!べらぼうめぇ!

酔っ払い
酔っ払い

一でな〜し!っとくるよぉ!

酔っ払い
酔っ払い

二でな〜し♪三でな〜し♪四でもなければ、五でもな〜しぃ〜♪六でもなければ、七でもな〜しぃ♪ 八でもなければ、九でもな〜し♪

酔っ払い
酔っ払い

十、十一、十二十三十四、十五、十六、十七、十八♪・・・

酔っ払い
酔っ払い

十、十一、十二十三十四、十五、十六、十七、十八♪・・・

酔っ払い
酔っ払い

止まんないねぇこの歌はどこまで言っても・・・

酔っ払い
酔っ払い

あぁ〜!いい心持ちだ!

男

ちょいと大将!大将!もし!大将!

酔っ払い
酔っ払い

な、なんだ!今呼んだのはおめぇか?

男

左様でございます!

酔っ払い
酔っ払い

なんでい!人のことを大将大将言いやがって!俺がいつ戦に行ったぁ!?

男

いやぁそういうわけじゃないんですがないんですがね・・・

男

お足元がふらついて危のうございます、いかがでございましょう?

男

車(人力車のこと)を差し上げたいんですがな・・・

酔っ払い
酔っ払い

車?おぉ〜!いいなぁ!差し上げてくれぇ!う〜んと高く!

男

いや持ち上げるんじゃないんですよ・・・乗っていただきたいんですがな?

酔っ払い
酔っ払い

車にかぁ?いやぁいいよ、俺は今乗りたくねぇからよ・・・

男

そんなこと言わないでいいじゃないですか、帰り車なんでお安くしときますがな!いかがなさいます?

酔っ払い
酔っ払い

なにをぉ!?帰り車だぁ?何を言いやがんでい!

酔っ払い
酔っ払い

帰り車だって客に進めると、客の方が「おっ!こいつは帰り車だから安く乗れるな!」と思うから、おめえは嘘をついて帰り車だと言ってんだろ!?

男

恐れ入りますな・・・実はそれが本当なんでございます・・・

酔っ払い
酔っ払い

偉い!偉いよぉ!その商売熱心なところが気に入った!

男

それじゃあ乗ってくれますか!?

酔っ払い
酔っ払い

いやだぁ!

男

なんですか、あなた喜ばしてがっかりさせちゃいけませんよぉ!

男

お願いしますよ、頼みますから乗ってくださいよぉ!

酔っ払い
酔っ払い

しょうがねえなぁ!こちとら江戸っ子だぁ!

酔っ払い
酔っ払い

人に頼まれて嫌と言った後には引き下がれねえ!なぁ!

酔っ払い
酔っ払い

よ〜し!じゃあ車乗ってくよ!

男

へぇ!左様でございますか!

男

それじゃあ今抑えてますから、よく捕まって、大丈夫ですか?

男

立ってるってと危のうございますよ!座っちゃってください!座っちゃって!

男

え〜!どちらへ参られますかな?

酔っ払い
酔っ払い

え?

男

どちらへ参られますかな?

酔っ払い
酔っ払い

どちらへ参りますぅ?どちらへ参りますって俺に聞くなよ〜!

酔っ払い
酔っ払い

そりゃお前俺が、「おい車屋〜!どこそこまで乗せてってくれ〜!」って言って乗ったわけじゃねえんだよ?

酔っ払い
酔っ払い

俺が歩いてるところをおめえが乗ってくれ乗ってくれというもんだから、しょうがねえ、おめえの顔を立てて乗ったんだから・・・

酔っ払い
酔っ払い

どこへでも好きなところへ連れてきなよ!

男

そういうのは困るんですがねぇ・・・どっか行くところはないんですか?

酔っ払い
酔っ払い

どこにも行くところねぇんだよ!

男

でもどっか行きましょうよ!

酔っ払い
酔っ払い

どこへ行こうなぁ・・・おめえのうち行こうか?

男

いやうちは困るんですがな・・・じゃあとりあえずまっすぐ行くのはどうです?

酔っ払い
酔っ払い

おぉいいな!まっすぐ行ってくれ!

男

そのあとは右と左、どちらに曲がります?

酔っ払い
酔っ払い

いや俺は曲がったことが大嫌いなんだ!どんどん真っ直ぐ行ってくれぇ!

男

それは困りますなぁどうも・・・

男

それじゃあとりあえず真っ直ぐ行きますがな、曲がるところがきたら教えてくださいな!そしたらちゃんと曲がりますから!

男

よろしゅうございますね?行きますよ!よっ!そらぁ!っとっとぉ!

酔っ払い
酔っ払い

おぉっとちょっと待ってくれ待ってくれ!

酔っ払い
酔っ払い

おめえがいきなり持ち上げたから、俺ぁ仰向けになっちゃったよ・・・

酔っ払い
酔っ払い

おい、そこにな、明かりのついてる家があるだろ?そこにこんばんわと訪ねてくれ?

酔っ払い
酔っ払い

それで向こうがなんですか?と聞いてきたら、なんでもありませんよぉ〜!っつっておめえ逃げてこい・・・

酔っ払い
酔っ払い

こんな夜中にくだらねぇ遊びしやがってんで、向こうが追っかけてくんのが速えか、俺乗っけておめえが逃げんのが速いか、ひとつ競争しよう・・・

男

いやですよぉ〜!そういうのはぁ〜!もうこのまま行きましょうよ〜!

酔っ払い
酔っ払い

だめだよ!そんなこと言わねえでやってくれ!おめえがやらねえと今度俺ぁ車から降りねえぞ?

酔っ払い
酔っ払い

さぁ〜あ!殺せぇ!

男

しょうがないねぇこの人は、どうも・・・

男

こちらですか?怒られたら謝ってくださいよ?弱ったなぁ全くもう・・・

男

こんな遅くまで明かりつけて起きてることねぇやなぁ、このうちも・・・

男

えぇ〜、こんばんわ・・・こんばんわ・・・こんばんわ!

女

はい!まぁ〜車屋さんじゃありませんか、何か?

男

えぇ、どうも、いやぁ今そこで酔っ払い一人乗せちゃったんです・・・

男

どうしてもこちらを尋ねねぇってと車から降りねえって言うもんですから、誠にすいませんが、別になんの用もないんでございますよ・・・

男

あぁそうですか・・・大変ですねぇ、酔っ払いの面倒まで見なきゃいけないんですから、本当にご苦労様でございます・・・

女

あらあらあらまぁまぁ、本当にへべのれけというやつですよ、まああんなに酔っ払っちゃって・・・

男

あぁ!ちょ、ちょっとだめですよ!旦那入ってちゃ!

男

ちょ、ちょっとおかみさん止めてください!止めてください!

女

いいんですよ、うちの人ですから・・・

男

あ・・・

男

あ、あのぉ〜どうも大変にすいません・・・あ、あの大変にお世話になり・・・

女

そんなことないでしょう?こっちの方がお世話になったんでしょ?どの辺から乗せたんです?

男

え?い、いやぁどの辺ってほどじゃないんですよ・・・

男

おたくの前の所で乗せましてね?まだ車回ってないんですよ・・・

女

あらそうですか、酔っ払うとそんなことばかりしてるんですよ・・・

女

あのこれ本当に少ないんですが、後でタバコでも買ってくださいな・・・

男

いえ!冗談言っちゃいけませんよ、おたくの旦那をおたくの前で乗っけて、あたしは御足(お金)もらいにくいよ・・・

女

まあまあいいじゃありませんか、またいろいろとね、お世話になることがあるかもしれませんから・・・

女

ありがとうございました、ご苦労様でした・・・

女

あっ、そこ閉めてってくださいな、はいっ、どうもご苦労様でございました!おやすみなさい・・・

女

どうも〜!うっふっふっふ・・・

女

・・・

女

どうしてお前さんうちの前から車に乗るんだよぉ!

酔っ払い
酔っ払い

乗るんだよぉ!ったってしょうがねぇじゃねえか!

酔っ払い
酔っ払い

向こうが乗ってくれって頼むから俺ぁ乗ったんだよ!

酔っ払い
酔っ払い

それよりもおめえ、車屋がいらねぇいらねぇって言ってんのに、無理に銭やって・・・

酔っ払い
酔っ払い

俺がいくら稼いでも足りねえと思ったら、おめえ・・・

酔っ払い
酔っ払い

あの車屋に貢いでたな?

女

何を言ってんだよぉ!まぁ〜どれだけ飲んできたのか知らないけど、臭いねぇ〜!もう早くお寝なさいよ!

酔っ払い
酔っ払い

え?

女

寝なさいよ!

酔っ払い
酔っ払い

いやぁ!俺は寝ない!

女

寝ないでどうすんの!?

酔っ払い
酔っ払い

ね、寝ないで俺はちょっと、こういうことをしようじゃねえか・・・

女

な〜に?この手つき?

酔っ払い
酔っ払い

こうやりゃあわかるじゃねえかぁ!こうやって硫酸飲むやつはいないんだよ?なぁ?

酔っ払い
酔っ払い

こうやったら決まってんだろ?酒だよ!

女

何をいってんだよ、シラフだったら飲ませないこともないけどさぁ・・・

女

本当にそんなに酔っ払ってきてだめですよ、飲ませるもんかねぇ!だめ!いけません!

女

飲ませんませんよぉ!

酔っ払い
酔っ払い

・・・おめえ近頃このうちでずいぶんいい顔になったね・・・えぇ!?

酔っ払い
酔っ払い

おめぇ一体誰に向かってその口の聞き方してんの?俺ぁこのうちの主ですよ?

酔っ払い
酔っ払い

主というのは、このうちで一番偉ぇんだ!戸主だよ戸主!

酔っ払い
酔っ払い

嘘だと思ったら、おめえ区役所行って聞いてみろ!俺が一番偉ぇんだ!

女

偉くないとは言わないけどさぁ〜!そんなに酔っ払ったら飲めないでしょ!?

酔っ払い
酔っ払い

そらぁ飲めないでしょじゃないんだよ!おめえ男としてそういうことを言われると、意地でも飲みたくなるんだ!

酔っ払い
酔っ払い

だいたい男ってのは、世の中逆らって生きてんだ!人が右だって言ったら左へ行きたくなんだよぉ!なぁ!?

酔っ払い
酔っ払い

だから俺が帰ってきたときにだよ?おめえが「あなたお帰りなさいまし!」ってつぅ〜っと行ってだよ?

酔っ払い
酔っ払い

表まで迎えに来て

酔っ払い
酔っ払い

「あなたずいぶんとお酔いになられてるようですけども、外は外、うちはうち・・・うちのお酌じゃうまくないでしょうけれども、あなた一杯いかが?」

酔っ払い
酔っ払い

くらいなこと言ってみなぁ!?

酔っ払い
酔っ払い

そうすりゃあ、「うちで支度をしてんのに外で飲んできちゃって悪かった!飲むのはよそう、飲みませんよ!」ってこういうことになるんだよ・・・

酔っ払い
酔っ払い

それをおめえみたいに「飲ませませんよぉ!」なんてなことを言うから、こっちは意地でも「飲むぞぉ〜!」ってなんだよぉ!

女

あたしだってね?支度だけはしてあるんだよ?

女

外は外、うちはうち、あたしのお酌じゃうまくないでしょうけれども一杯やるかい?

酔っ払い
酔っ払い

じゃ、もらおうか・・・

女

なんだよこの人はぁ!インチキじゃないかねぇ!

酔っ払い
酔っ払い

インチキだよぉ!インチキしなきゃうちじゃ飲めねぇんだからぁ!なんでもいいから早く持ってきてくれぇ!

酔っ払い
酔っ払い

頼むよぉ!頼むよぉ〜♪ぉぉ・・・

酔っ払い
酔っ払い

おいおい、ちょっと待ってくれ、な〜にこれ?いや酒はわかってるよ、酒は・・・

酔っ払い
酔っ払い

え?湯のみに冷で酒を一杯注いでだよ?それを俺の前に置いて、すっとそっちへ離れて俺をじ〜っと観察するなよ・・・

酔っ払い
酔っ払い

なんだいこりゃあ・・・こんな寂しい話はないよ?

酔っ払い
酔っ払い

何にもないの!?つまむものは!

女

何にもないよ!

酔っ払い
酔っ払い

な、何にもないっておめえ投げやりになってなんか言うねぇ・・・

酔っ払い
酔っ払い

なんかこう口の中に放り込んでさ、上の歯と下の歯をトントントントンっとぶつけ合わせたいという料簡に俺は今なってるんだ・・・

酔っ払い
酔っ払い

な〜んにもないの!?

女

な〜んにもないんだよぉ!もうちょいと早く帰ってきてたら、今そこに油虫ならいたけど・・・

酔っ払い
酔っ払い

こんちくしょう!油虫で飲めるかい!えぇ〜!?

酔っ払い
酔っ払い

あるでしょ〜!人が住んでるうちだよ!なんかないわけがない!

酔っ払い
酔っ払い

ちょっと台所行って探してごらん?俺が今朝食べ残した納豆の残りが三十七粒半残ってるんだ・・・あれだしなよ!

女

それあたし食べちゃったよ・・・

酔っ払い
酔っ払い

えぇ?

女

あたし食べちゃったぁ!

酔っ払い
酔っ払い

・・・

酔っ払い
酔っ払い

あぁ驚いた・・・俺今おめえに呑まれんのかと思ったよ・・・大きな口を開けるねお前は・・・

酔っ払い
酔っ払い

それよりもっと開けなきゃいけない時どうすんの?口の両脇を裂かなきゃなんないよ?

酔っ払い
酔っ払い

お前は言葉遣いがいけないよ?あれはどうした?って聞いたら、お前は女なんだから「食べちゃった!」なんて言うんじゃあないんだよ・・・

酔っ払い
酔っ払い

日本にはいい言葉がたくさんあるんだよ?

酔っ払い
酔っ払い

あれどうした?

酔っ払い
酔っ払い

いただきました・・・

酔っ払い
酔っ払い

いい言葉じゃあねえか、こういうことを言ってんだよ?そうすりゃお前ね、こんなんなって口が開いて、呑まれそうになるなんてことはないんだよ・・・

酔っ払い
酔っ払い

いい言葉じゃあねえか、こういうことを言ってんだよ?

酔っ払い
酔っ払い

そうすりゃお前ね、こんなんなって口が開いて、呑まれそうになるなんてことはないんだよ・・・

酔っ払い
酔っ払い

わかんなことはないだろう?あれどうした?って言われて、いただきました・・・

酔っ払い
酔っ払い

いいか?あれどうした?

酔っ払い
酔っ払い

いただきました・・・

酔っ払い
酔っ払い

こうなりゃいいんだよ・・・

酔っ払い
酔っ払い

あれどうした?

酔っ払い
酔っ払い

食べちゃったぁ〜!

酔っ払い
酔っ払い

こうなるじゃねえか・・・な?だからそういう風にいいなよ・・・

女

そう?じゃあ、いただきました・・・

酔っ払い
酔っ払い

そうだと言われりゃ、しょうがねえや、他のもんを俺ぁまた考えるよ?

酔っ払い
酔っ払い

昆布の佃煮は?

女

いただきました・・・

酔っ払い
酔っ払い

あぁそう・・・鮭の焼いたやつが残って

女

いただきましたぁ・・・

酔っ払い
酔っ払い

みんないただいちゃうんだから・・・なんかないのかい!?

女

何にもないんだよぉ!遅く帰ってきてうるさいねぇ本当に!

女

じゃあどう?横丁の屋台のおでんで!

酔っ払い
酔っ払い

おぉいいとも・・・いや嬉しいねぇ!おでんに気がつく!

酔っ払い
酔っ払い

あ、いや、うん、ひとつ買ってきておくれよ・・・とにかくね、俺が好きなのは、やきだからな・・・

女

やきってな〜に?

酔っ払い
酔っ払い

いや、やきって何なんて聞くなよおめえ・・・焼き豆腐のことをやきって言うんだよ・・・

女

じゃあ焼き豆腐って言えばいいじゃないか・・・

酔っ払い
酔っ払い

そんなおめえやきどうふぅ〜なんて長ったらしいこと言えねえんだよ!

酔っ払い
酔っ払い

おでん屋の親父に、「おう!やきひとつ!」って言えば、向こうですっと出してくれんだよ・・・

女

そうかい・・・あとは?

酔っ払い
酔っ払い

あとは、がんだな・・・

女

鳥かい?

酔っ払い
酔っ払い

鳥じゃない、がんもどきだよ!がんもどきのことをがんと言うの!

酔っ払い
酔っ払い

あとお前の好きなもの買ってきていいよ・・・

女

あぁそう?じゃああたし、じとペんがいいねぇ・・・

酔っ払い
酔っ払い

なんだいそりゃあ・・・

女

すじにはんぺん・・・

酔っ払い
酔っ払い

変な詰め方するなよ!早くいっておくれ早く!早く行けって!

酔っ払い
酔っ払い

早く行けってのに、また出かけるとなると鏡台の前に座りやがって!

酔っ払い
酔っ払い

いいんだよおめえ顔なんざどうだって!おめえは顔なんざねぇ方がいいんだよ?

酔っ払い
酔っ払い

手と足だけあって俺の用さえしてりゃいいんだから!ぐずぐずしてるってと叩き出すぞぉ!

酔っ払い
酔っ払い

手と足だけあって俺の用さえしてりゃいいんだから!ぐずぐずしてるってと叩き出すぞぉ!

酔っ払い
酔っ払い

ちくしょうーー!馬鹿ぁーー!

酔っ払い
酔っ払い

・・・

酔っ払い
酔っ払い

はぁ・・・ありがてぇなぁ・・・俺は表ではこんなこと言ったことはねぇけれども、表行きゃみんな褒めてくれんだよ・・・

酔っ払い
酔っ払い

おめえんとこのかみさんはいい女だってんで、そりゃ俺だっていい女だ、いいかかあだってそう思ってるよ?

酔っ払い
酔っ払い

だけどそんなことを面と向かって言ってごらん?

酔っ払い
酔っ払い

おめえはいい女だよなんて言ったら、女なんざすぐにその気になりやがって、こんなんなってひっくり返ってそうかしら?ってんで調子に乗るんだ・・・

酔っ払い
酔っ払い

だからこんちくしょう!おたふく〜!間抜け〜!馬鹿ぁ〜ってなことを言ってるけど

酔っ払い
酔っ払い

本当は俺ぁ感謝してんだ・・・

酔っ払い
酔っ払い

いつもこんな酔っ払いの面倒を見てくれて本当にありがとうございます

酔っ払い
酔っ払い

っていつも俺ぁ拝んでんだからぁ!

酔っ払い
酔っ払い

あっ!おめえまだそこにいたのかよぉ!

酔っ払い
酔っ払い

元全部見られちゃったよぉ!

替わり目を聞いて

この演目は、元々もう少し長い演目でして、このあとうどん屋も絡んできます。しかしながら、五代目古今亭志ん生さんの改作によって、今回のサゲのように、少し短く、夫婦の人情噺を描いたような形となりました。

もし、気になる方がいらっしゃれば調べてみてください。

ただ、そうなるとやはり人情噺とだけあって、難しく若い噺家さんでは芸がクサくなったり、わざとらしくなってしまいます。

長年の下積みを経て、人間らしさが板についてきた年齢になってようやくなせる演目です。

替わり目を聞くと、昔は、人の本音や思っていることは当事者同士では筒抜けだったのではないかなと感じました。現代は、顔が見えなくても、いくらでも連絡手段はありますし、SNSで身近に人を感じることはできます。

しかしながら、その人がどんなことを考えているのかを読み取るのは難しい時代になったのではないかな?と思いました。

時代が進むに連れて、一人の人間が背負うキャラクターの数が増えたと思うからです。

家族と一緒にいる時の自分。友達と一緒にいる時の自分。 学校、会社にいる時の自分。SNSをやっている時の自分。それぞれで、違った自分がいるようになっています。

それに比べて、昔(落語の世界)では、役割がきちんと決まっていて、ブレません。また「替わり目」の最後のオチのように、本音をポロっと口に漏らしただけで、相手に簡単に伝わります。

一見、不便な世界だと思うかもしれませんが、世の中本音を言った方が信用されると私は思っています。

だからこそ、今は「嘘、偽り」に対してのバッシングが強いように思われます。今は便利な世の中にはなりましたが、人間対人間、Face to Face(面と向かって)という意味では本音を引き出しづらい不便な世の中になったのかもしれませんね。

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