落語【道灌】台本 吹き出し風 

落語 台本

落語に出てくる人物はってと、これはもうお馴染ではっつぁんに熊さん、横丁の御隠居さん、馬鹿の与太郎、人がいいのが甚兵衛さん・・・

このはっつぁんとか熊さん、こういう連中がご隠居さんの所に遊びに行くのが、落語の方の幕開けになることがよくありまして・・・

道灌を聞くなら「柳家小さん」

道灌は代表的な前座噺ではありながらも、滑稽噺を得意とする柳家小さんが演じる道灌は楽しみなネタになる。福々しい表情と表裏のない純粋で自然、天然なはっつぁんが心地よい落語の世界を演出する。

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はっつぁん
はっつぁん

ご隠居こんちわ!

ご隠居
ご隠居

おお、はっつぁんかい、さあさあこっちへお入り

はっつぁん
はっつぁん

ああどうもどうも!

はっつぁん
はっつぁん

いやぁそれにしてもご隠居さんの所にくるってと、色んなガラクタが置いてありますがね!

ご隠居
ご隠居

なんだお前は・・来るなり失礼なやつだな

はっつぁん
はっつぁん

あれ?その後ろのやつ面白いですね・・・

はっつぁん
はっつぁん

屏風みたいなもんに絵がペタペタ貼ってありますけど・・・

はっつぁん
はっつぁん

なんですそれ?

ご隠居
ご隠居

これはな、貼り雑ぜの古屏風と言ってな

ご隠居
ご隠居

主に歴史画を扱って、古びたところが値打ち、昔の字や絵だね・・・

はっつぁん
はっつぁん

ああそうっすか、この一番上の絵は面白いですね!

ご隠居
ご隠居

これはね、有名な太田道灌だな

はっつぁん
はっつぁん

ああ、大きな土管ですか?

ご隠居
ご隠居

そうじゃない・・太田左衛門乃輔

ご隠居
ご隠居

のちに入道して、道灌となられた方だ

はっつぁん
はっつぁん

ああそうですか、それで何してるんです?

ご隠居
ご隠居

地にいて乱を忘れず、山中に狩倉(狩猟)にお出かけになったところだな

ご隠居
ご隠居

山の中に鳥や獣を取りに行ったってんだ

ご隠居
ご隠居

すると雨が降ってきた・・・

ご隠居
ご隠居

道灌公、雨具の持ち合わせがなかった・・

ご隠居
ご隠居

馬を走らせる道中ちらっと見てみると家が一軒あったので

ご隠居
ご隠居

雨具を借りようとその家へ訪れると、中から十五、六になる娘さんが出て来てな・・

ご隠居
ご隠居

道灌公が雨具を所望するとポウっと顔を赤らめて中へ入って、再び出てきたときに、盆の上に山吹の枝を一枝置いて

ご隠居
ご隠居

『お恥ずかしゅうございますが』と言って差し出したな

はっつぁん
はっつぁん

な、なんですその山吹の枝ってのは?

ご隠居
ご隠居

まあお前さんに分からないことも無理はないな・・・

ご隠居
ご隠居

その時道灌公にもお分かりが無かった・・・

ご隠居
ご隠居

しばし呆然となさっていると、ご家来が1人進み出て

ご隠居
ご隠居

『恐れながら申し上げます』

ご隠居
ご隠居

『古いお歌に「七重八重 花は咲けども 山吹の みのひとつだに なきぞ悲しき」というお歌がございます』

ご隠居
ご隠居

『山吹というのは花が咲いても実がならないもの・・・』

ご隠居
ご隠居

『お貸し申す蓑(みの=雨具)がございません・・・』

ご隠居
ご隠居

『と、「実の」と「蓑」をかけたこれはお断りの意味でございましょう』

ご隠居
ご隠居

と申し上げると道灌公、はたと膝を打たれ、『ああ余はまだ歌道に暗いな』とおっしゃって

ご隠居
ご隠居

そのままお城へ帰ったという、そういう絵だねぇ・・・

はっつぁん
はっつぁん

ああそうですかぁ・・・

はっつぁん
はっつぁん

なんだかよく分からねえけど早い話がその道灌て偉え殿様が、その娘に一つへこまされたと!

はっつぁん
はっつぁん

こういうわけですか?

ご隠居
ご隠居

まあそういう形になるかな・・・

はっつぁん
はっつぁん

へえ大したもんだ!あっしはねぇ、ちょっと分からねえところがあるんですよ!

ご隠居
ご隠居

なんだい?

はっつぁん
はっつぁん

『歌道に暗い』ってのは何です?

ご隠居
ご隠居

それは娘の出した歌のなぞが解けなかったろ?

ご隠居
ご隠居

歌の道に暗い、歌道に暗い!

はっつぁん
はっつぁん

ああ、なるほどね!これは面白えなこりゃあ!

はっつぁん
はっつぁん

あのすいませんけどご隠居さんねぇ!

はっつぁん
はっつぁん

その雨具の断りの歌ってのをちょいとあたくしにも書いてくれませんかねえ!

ご隠居
ご隠居

どうするんだい?

はっつぁん
はっつぁん

いや、あっしの所にもねえ!たちの悪い道灌が現れるんですよ!

ご隠居
ご隠居

なんだいそりゃ・・・

はっつぁん
はっつぁん

雨具持ってないことのやつを道灌ってんでしょ?

はっつぁん
はっつぁん

貸した雨具返したためしがねえんだい!

はっつぁん
はっつぁん

で、今度来たらさ!その歌見せて断ってやろうと思ってね!

ご隠居
ご隠居

お前さんの友達じゃ分からないだろうよ

はっつぁん
はっつぁん

いいんすよ!こっちさえ分かってりゃそれでいいんだから!

はっつぁん
はっつぁん

かなで書いてください!かなで!

はっつぁん
はっつぁん

書けた?すいませんじゃあねえあっしはこれで帰りますよ!

はっつぁん
はっつぁん

え?何がってね表見てちょいとご覧なさいよ!

はっつぁん
はっつぁん

雨!降って来てますよ!

はっつぁん
はっつぁん

これから家帰ってね、ちょいと道灌が訪れんの待ってますんで!

はっつぁん
はっつぁん

どうもありがとうございました!

道灌を聞くなら「柳家小さん」

道灌は代表的な前座噺ではありながらも、滑稽噺を得意とする柳家小さんが演じる道灌は楽しみなネタになる。福々しい表情と表裏のない純粋で自然、天然なはっつぁんが心地よい落語の世界を演出する。

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はっつぁん
はっつぁん

そら言わんこっちゃねえ、ぽつぽつ降ってきやがった、驚いたねぇこりゃあ!

はっつぁん
はっつぁん

家へ着く途端に大変な雨だねこりゃあ!ずいぶんと道灌が通るよ・・・

友達
友達

おう!いるかい!?

はっつぁん
はっつぁん

おっ?早速来やがったな?待ってました!

友達
友達

ちょっとすまねえ借りもんだ!

はっつぁん
はっつぁん

分かってるよぉ!雨具を借りに来たんだろ?

友達
友達

よせよ、俺かっぱ着てるよ!

はっつぁん
はっつぁん

あれ?この野郎かっぱ着てやがらぁ・・・

はっつぁん
はっつぁん

用意のいい道灌だなぁ・・・

友達
友達

なんだ道灌ってのは・・・

友達
友達

俺はこれからね、車引っ張って木場まで行くんだい!

友達
友達

帰りが遅くなるんだ!提灯貸してくれい!

はっつぁん
はっつぁん

提灯?お前どこの世の中に提灯借りに来る道灌がいるんだよぉ!

はっつぁん
はっつぁん

雨具だろ?

友達
友達

だからかっぱ着てるだろ!?

はっつぁん
はっつぁん

着てていいから借りろ!

友達
友達

変なこというなよおい!

はっつぁん
はっつぁん

じゃあさ、お前がさ?

はっつぁん
はっつぁん

『雨具を貸してくれ』とそう言ったら、俺がそうっと提灯を貸してやろうじゃねえか!

友達
友達

なんか言うことがおかしいなおめえ!

友達
友達

そう言えばいいんだな?

友達
友達

雨具貸してくれ!?

はっつぁん
はっつぁん

『雨具を貸してくれ』とそう言ったら、俺がそうっと提灯を貸してやろうじゃねえか!

はっつぁん
はっつぁん

この野郎ぉ・・やっと言いやがったなぁ・・・

はっつぁん
はっつぁん

こうなればこっちは女形だからな・・・

はっつぁん
はっつぁん

お恥ずかしゅう・・・

友達
友達

なんだこりゃあ?

はっつぁん
はっつぁん

いいから読め!

友達
友達

ナ、ナナ・・ヘヤヘ?ハハナハサケドモ?

はっつぁん
はっつぁん

この野郎、それはそうやって読むんじゃねえんだ!

はっつぁん
はっつぁん

いいか、よく聞いてろ?

はっつぁん
はっつぁん

七重八重!花は咲けども、山伏の・・・

はっつぁん
はっつぁん

味噌ひと樽と鍋と窯敷き

友達
友達

なんだこりゃあ!おめえの考えた都々逸か?

はっつぁん
はっつぁん

都々逸!?

はっつぁん
はっつぁん

それを都々逸なんて言うところを見ると!

はっつぁん
はっつぁん

おめえもよっぽど歌道に暗いな!

友達
友達

ああ!角(かど)が暗いから提灯借りに来た!

道灌を聞くなら「柳家小さん」

道灌は代表的な前座噺ではありながらも、滑稽噺を得意とする柳家小さんが演じる道灌は楽しみなネタになる。福々しい表情と表裏のない純粋で自然、天然なはっつぁんが心地よい落語の世界を演出する。

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