落語に出てくる一番の物知りはというと、横丁の御隠居さんということになっております。
そこへ馬鹿のはっつぁんや熊さんが訪ねてきたりしますと落語の始まりだったりするようなことがよくありまして・・・
つるを聞くなら「桂歌丸」
つるを得意とする落語家といえば「桂歌丸」の他にはいない。元々は新作落語を得意とした形から古典落語を極め、古典落語を老若男女問わない落語ファンにも受け入れられる世界を生み出した。
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ご隠居さんこんちわ!
おお珍しいな、はっつぁんじゃないか!
まあまあこっちへお上がり!
ごちそうさまです、おかずは何?
なんだいそのごちそうさまですってのは?
だってご隠居さん、今言ったじゃねえか?
まんまお上がりって・・・
・・・まあまあこっちへ上がりと言ったんだ!
まぁ・・本当にお前は普段から飯のことしか考えてないからそういう発想に至るんだ!
それにしても、遊びに来るときは毎日でも来るというのに、来なくなるとぱたりと来なくなるなお前さんは・・・
それにしても、遊びに来るときは毎日でも来るというのに、来なくなるとぱたりと来なくなるなお前さんは・・・
さてはまた暇な若い者集めて、例の床屋でくだらない話でもしているんだろう?
いえそれがね?確かに暇な若い者集めて床屋で話はしてたよ?
だけどよ、これがまたくだる話をしたんだよ・・・
なんだいくだる話ってのは?政治の話でもしてたかい?
いや別にそういう話をしてたんじゃないですよ・・・
あっそうそう、実はこないだも町内の若い者大勢でもって床屋へ集まったんだい!
で、色々と世間話をしている間にほら、ご隠居さんも知ってるでしょ?
床屋の奥に生意気にあれがあるじゃないすか・・・
あの・・ヘこの間が!
なんだいそのへこの間ってのは?
隠居さんへこの間知らない?いい年をして・・・
へこの間だよ?
壁がへっこんでてさ、前に花なんかが活けてあるところ・・・
床の間ってんだよそれは!
あっしはへこんでるからへこの間だとばかリ思ってたんだ!
なるほど床屋の奥にある部屋だから床の間か!
違う!
床の間は床屋だけにあるもんじゃないんだ、どんな家にでもあるところにはあるもんなんだ!
ああそうなんすか・・・
それでね!そこに一年中つるの絵が飾ってあるんだよ!つるの絵が!
それで六さんが『つるは日本の名鳥だ』ってやがんですよ!
名鳥ってのはなんだって聞いたら、名のある鳥だって言うから、なんで名のある鳥なんだって聞いたら『わけ分からねえ』って言うんですよ!
じゃあご隠居さんなら物知りだから今度聞いてみようってんで、ここに来たんだ!
ご隠居!つるってのは本当に日本の名鳥かい?
これぁ驚いた、私は六さんという人を見直した!
その通り!つるというのは立派に日本の名鳥ですよ!
どうして?
いやどうしてと聞かれると急には答えられないけれども
ごく分かりやすく言えばあんなごく分かりやすい国、日本に合っている鳥はないよ?
足がすぅ~っと細くって胴がぐっと締まっていて、首が長くてくちばしが長い・・・
おまけに丹頂というものもいただいている・・・
第一はっつぁんや、日本の名木に松の木というものがあるだろう?
松に鶴、絵になるだろう?
言われてみればその通りだ!絵になるねぇ!
けど隠居さんの前だけどあれは随分首が長いね!
長い!
実は今は我々は簡単につるだつるだと言うけれども昔はそうは言わなかったそうだな
首の長いところからきて、首長鳥と呼んでいたそうだな・・・
古い書物にある首長鳥とは全てつるのことだ・・・
じゃあご隠居さんに一つ聞くけどね?どういうわけでその首長鳥がつるになったってんだよ!?
首長鳥のままじゃだめなのかよ?どういうわけでつるになっちゃったの?
はっつあんわけが聞きたいかい?今日中に?
・・・できれば今日中に願いたいねえ!
こんなこと聞くのに三泊四日ってのは長すぎるからねえ!
お前が分からないなら、私も退屈していたところだ、教えてやろう・・・
いいかい?よくお聞き・・・
どういうわけで首長鳥からつるになったかというと
昔ひとりの白髪の老人が浜辺の岩頭に立って、沖を見ているとはるか唐土・・・・
唐土だから中国だ、唐土から一羽の首長鳥のオスが・・・
つ~~~~~~~~~~~~
っと飛んできて浜辺の松の枝にひょいっととまった・・・
後からメスが・・・
る~~~~~~~~~~~~
っと飛んできてそれで『つる』だよ
・・・へ?
ご隠居さん今何騒いでたの?
首長鳥がつるになった理由聞いてんの!
だから今言ったじゃないか!
ちょっともう一回、よく聞こえなかった
こういうことは二度も三度も言わせるんじゃないよ!恥ずかしいんだから!
いいかい?
昔ひとりの白髪の老人が浜辺の岩頭に立って、沖を見ているとはるか唐土の方から一羽の首長鳥のオスが
つ~~~~~~~
っと飛んできて松の木の枝にひょいととまった・・・
後からメスが
る~~~~~~~~~
と飛んできて『つる』だよ
・・・面白い!面白い!
じゃああっしはこれで・・・
待ちなよ!もう少しゆっくりしていきなよ!
また来ます!さよなら!
つるを聞くなら「桂歌丸」
つるを得意とする落語家といえば「桂歌丸」の他にはいない。元々は新作落語を得意とした形から古典落語を極め、古典落語を老若男女問わない落語ファンにも受け入れられる世界を生み出した。
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驚いたねぇ!あの隠居ってのはなんでも知ってるね!
あそこ行くたんびに利口になるね!
どっかでやってみてえな・・・覚えてるうちに・・・
あっ!たつんとこいってやってみよう!
あのたつ公普段から人のこと馬鹿にばかりしてやがんだから!敵うつならこういう時しかできねえ!
おう!たっつぁん!?いるかい!?
いねえよ!
いねえもんが返事するわけねえだろ!開けるぞ!
なんだ、茶飲んでのんびりしてんじゃねえかよ!お前あれ知ってる?
知ってる
まだ俺何にも言ってねえじゃねえかよ!
ほらあれ、つるね!
おめえの頭だろ?
なんでそういうことを言うの?それ聞いて冗談と思わずに傷つくやつもいるんだぞ!?
俺が言ってるのは鳥の方のつる!
昔は首長鳥っていってた!
そして首長鳥がつるになった・・・
どういうわけで首長鳥がつるになったか、たっちゃん聞きたいだろう?
聞きたくねえ俺ぁ!今忙しいんだ!
忙しいんだって今そこで茶飲んでたろ!?
いいから聞けよ!利口になるから!いいかい?
たっちゃん、良くお聞き・・・
どういうわけで首長鳥が鶴になったかというと
どういうわけで首長鳥が鶴になったかというと昔ひとりの百八つの老人が浜辺で浣腸をしながら沖の方を見ていると
はるかとうもろこしの方から一羽の首長鳥のオスが!
つる~~~~~~~~~~~
っと飛んできて浜辺の松の枝にひょいととまったんだ!
あとからメスが
・・メスが・・・
メスが・・・
たっちゃん落ち着いて・・・
落ち着いてるよ俺は!
いやね、どういうわけで首長鳥がつるになったかというとだぞ?
たっちゃん良くお聞き・・・
昔ひとりの百八つの老人が浜辺で浣腸をしながら沖の方を見ていると
はるかとうもろこしの方から一羽の首長鳥のオスが!
つる~~~~~~~~
っと飛んできて浜辺の松の枝にひょいととまった・・・
後からメスが・・・
メスがぁ!
・・・さよなら
何しに来たんだあいつぁ!!
隠居さ~ん!どういうわけで首長鳥がつるに・・・
さてはお前さんどっかでやってきたな?
目が上ずってるよ!?よくお聞き!?
昔ひとりの白髪の老人が
ハクハツ!?百八つじゃねえんですか!
違うよ!白髪!
なんですそのハクハツってのは?
白い髪の毛白いひげを生やしたひとりの老人が浜辺の岩頭に立って
浜辺の岩頭?浜辺で浣腸してたんじゃねえのか?
なんだいその岩頭ってのは?
岩の上に立って、沖の方を見ていると、はるか唐土の方から一羽の首長鳥のオスが
つ~~~~~~~~
っと飛んできて浜辺の枝に・・・
あぁ!それだ!ありがとうございました!
たっちゃん♡
また来たなおめえは!
どういうわけで首長鳥がつるになったかと言うとだぞ?
まだやってんのかおめえは!?暇な野郎だなこの野郎は!
たっちゃん良くお聞き・・・
昔ひとりの白髪の老人がだ、なぁ!?
浜辺の岩頭に立って!沖を見ていると!
はるか唐土の方から一羽の首長鳥のオスが!
つ~~~~~~~~~~
っと飛んできて浜辺の松の木に
る・・・と止まったんだ!
後からメスが・・・
め・・・
うわぁぁぁ!!!
おめえ食いつくんじゃねえだろうなぁ!後からメスが飛んできて何て言ったんだ!
黙って飛んできた・・・
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