一言で「中村仲蔵」を解説すると…

斧定九郎を独自に演じて成功を掴んだ歌舞伎役者、中村仲蔵の噺。
主な登場人物

むさい役だった斧定九郎という役を独自の演技で人気役に変えた男、仲蔵です

中村仲蔵の実力を認めつつ、試練を与える仕様、中村伝九郎です
中村仲蔵の詳細なあらすじ
中村仲蔵は、努力で名優となった実在の歌舞伎役者である。その人生を描いた落語『中村仲蔵』は、工夫と根気で成功を掴む物語である。
仲蔵は名題に昇進するも、与えられたのは『忠臣蔵』五段目の地味な役・斧定九郎であった。名題には不釣り合いなこの役をどう演じるか、仲蔵は悩む。
解決策を求め、柳島の妙見様へ願掛けをする。満願の日、雨宿りをしていた蕎麦屋で、浪人風の武士と出会う。その姿からヒントを得た仲蔵は、新しい定九郎像を作り上げる。
初日、観客が飲み食いする「弁当幕」の時間に登場。しかし、仲蔵の定九郎は圧倒的な迫力で観客の目を釘付けにし、劇場は静まり返る。
楽屋での沈黙に不安を感じる仲蔵。しかし、道行く人々は「今日の定九郎はすごかった」と称賛の声を上げる。師匠の中村伝九郎も「お前は大した役者になる」と絶賛する。
この成功を機に、仲蔵は名優としての道を歩み始める。
実在の人物を描いた感動の物語である。芸の工夫と努力の大切さ、観客を驚かせる演技の工夫が詰まった名作落語である。
中村仲蔵を聞くなら「三遊亭圓楽」
三遊亭圓楽の『中村仲蔵』は、重厚な語り口と緻密な表現力が光る名演である。仲蔵の苦悩や努力がリアルに描かれ、観客を物語の世界へ引き込む。圓楽ならではの品格ある語りで、落語の芸術性を存分に堪能できる一席である。
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1. 歌舞伎役者の格と位

歌舞伎の世界には厳格な階級制度が存在し、役者は修行を積みながら徐々に昇進していく。江戸時代の歌舞伎役者の位階は、おおまかに以下のように分類される。
- 名題(なだい):正式に主役級の役を演じることができる格の役者。
- 相中(あいちゅう):名題の下に位置し、端役や脇役を担当する者。
- 名題下(なだいした):名題には届かないが、将来的に昇進の可能性を持つ者。
- 立役(たちやく):主に男性の役を演じる役者。
- 女形(おやま):女性役を専門に演じる役者。
中村仲蔵は、努力によって名題に昇進したものの、与えられたのは『仮名手本忠臣蔵』五段目の斧定九郎という地味な役だった。この役は通常、名題の役者にはふさわしくないとされていたが、仲蔵は独自の工夫によってこの役を輝かせることに成功した。
2. 歌舞伎の舞台背景

画像参照:imidasより
歌舞伎の舞台は、江戸時代から独自の発展を遂げ、観客を魅了するさまざまな工夫が施されていた。
- 廻り舞台(まわりぶたい):舞台が回転することで場面転換がスムーズに行われる仕掛け。
- 花道(はなみち):観客席の中に延びる舞台通路で、登場や退場の際に使われる。
- 黒御簾音楽(くろみすおんがく):舞台裏で奏でられる音楽や効果音。
- 見得(みえ):役者が一瞬動きを止め、観客に強烈な印象を与える演技。
仲蔵は、従来の定九郎像にとらわれず、より武士らしい風格を持たせる工夫をした。そのためには、衣装、所作、表情のすべてを再考し、歌舞伎の伝統的な演技様式に独自のアレンジを加える必要があった。
3. 柳島の妙見様とは?

画像参照:墨田区観光協会より
柳島の妙見様とは、江戸時代から信仰を集めていた妙見信仰の寺社であり、現在の東京都墨田区にある「法性寺(ほっしょうじ)」のことを指す。
妙見信仰は、北極星・北斗七星を神格化した妙見菩薩を信仰するもので、武士や庶民の間で広く信仰されていた。妙見様は「開運」「勝負運」「厄除け」にご利益があるとされ、当時の役者たちも芸の上達や成功を祈願するために訪れた。
仲蔵もこの妙見様に願掛けをし、満願の日に偶然出会った浪人風の武士から定九郎の演技のヒントを得た。柳島の妙見様は、彼の運命を変える重要な場所となったのである。
4. 『仮名手本忠臣蔵』とは?
『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』は、江戸時代に作られた人形浄瑠璃および歌舞伎の演目で、赤穂事件(赤穂浪士の討ち入り)を題材にしている。全十一段構成の長大な作品で、主君の仇討ちに命をかけた浪士たちの物語が描かれている。
五段目は、その中でも比較的脇筋にあたる部分であり、主人公の仇討ちの背景として描かれる山崎街道の場面が登場する。この場面には、浪人・斧定九郎が登場し、雨宿りしていた女性を襲って金を奪おうとするが、最後には討ち取られるという展開が含まれている。
斧定九郎は、一般的に山賊のような風貌の悪党として描かれることが多かったが、中村仲蔵はこの役に新たな解釈を加え、品格のある武士としての姿を取り入れた。結果として、彼の演じる定九郎は観客の目を釘付けにし、新たな歌舞伎の可能性を示すものとなった。

画像参照:Wikipediaより
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三遊亭圓楽の『中村仲蔵』は、重厚な語り口と緻密な表現力が光る名演である。仲蔵の苦悩や努力がリアルに描かれ、観客を物語の世界へ引き込む。圓楽ならではの品格ある語りで、落語の芸術性を存分に堪能できる一席である。
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