火事と喧嘩は江戸の華なんてことを申しまして・・・これはまあ火事が大変に多かったそうですな・・・
冬場になりますと奉公人は半分くらい里に帰ったというぐらい、あんまり冬は火事が多いので怖かったそうです・・・
ですからいわゆる火消しなんかが発達をして、今の消防団、消防署にまでなったという話を聞いたことがありますが・・・
火の番というのが各町内にございまして・・・
二番煎じを聞くなら「古今亭志ん朝」
古今亭志ん朝が演じる「二番煎じ」は、その粋でリズミカルな語り口が特徴です。彼の滑らかな語りと調子の良いリズムは、聴く者を自然と引き込みます。志ん朝の「二番煎じ」を聴けば、その場の情景が目の前に広がり、まるで自分も物語の一部になったかのように感じられます。

さあさあさあ!皆さん支度が整いましたか?

あぁそうですか!それじゃあね、一の組がまず廻ってきますから二の組はこの火の番小屋で休んでいただいて・・・

あたしたちが戻ってきたら代わっていただきます、よろしいですね?

それじゃあ一の組の皆さん!さあ表へ行きましょ!

・・・うぅ・・あ~・・・

今日はまたずいぶんと冷えますなぁ・・・

ええ、寒うございますなぁ・・・
これはもうさっさと廻りましょう

そうしましょうそうしましょう・・・

火の用~~~人~~~~♪さしゃ~~~りやしょ~~~~~!!!

さあさあ戻ってきました戻ってきました・・・

寒い寒い・・・早く早く火にあたりたい・・・

さあ、一の組が終わりましたよ!次は二の組いってらっしゃい!

どうぞごゆっくりお廻りくださいませ!

あぁ~寒かった寒かった・・・

みなさんご苦労さんさんご苦労さん、火にあたりましょ・・・

今日はまた馬鹿に冷えましたなぁ・・・

いやぁ本当でございますなぁ・・・

ときに月番さん?

はい?なんでございましょう黒川先生?

いえあたくし僭越ながら、お酒を持ってまいりました・・・

いかがなものかな?皆さんでこれを飲んで!

この冷えた体を温めるというのは?

・・・黒川さん今何ておっしゃった?

酒を持ってきたから、これをみんなで飲む?

冗談じゃありませんよ!ここ火の番小屋ですよ!?

料理屋の座敷やなんかじゃない・・・

こんな所で酒を飲んでてごらんなさい?

見回りの役人に見つかったらどんな御咎めを受けるか分からないじゃありませんか!

あぁ、これは大変に失礼を致しました・・・

あたくしはじめての火の廻りで知りませんでした、ではこちらは・・・

いえいえいえ!

・・・しまっちゃいけません・・・

あの、宗助さん?それ持ってって・・・

そこに土瓶があんでしょ?それそこにあけちゃって・・

そしたらそれをここへ持ってきて・・・

月番さんこれはどういうことですか?

どういうことにって、お考えがつくでしょう?

でも今「酒はいけない!」とこうおっしゃった・・・

ああそうです!ひょうたんから出てくる酒はいけません!

土瓶から出てくる煎じ薬ならばいい!

あたしもお酒は持って来た!

なんだ脅かしちゃいけませんよ~!

はっはっは!いやいやこんな寒い晩に飲まずにはいらないってんですよ!

じゃあこのお酒もそっちへ持ってって、それから湯呑を皆さんにお配りして・・・

はい?宗助さんなんです?

あたくし実はこういうものを持ってまいりました!

ん?なんだいこれは・・・なに?

獅子の肉です!

獅子の肉?ほぉぉ!これはまたあったまりそうですなぁ!さすがですなぁ、気が利きますねぇ!

あぁ・・・でも気が利きませんよ?ここは火の番小屋!鍋がないでしょう

ええ・・・へへっ、ちゃんとかぶってまいりました!

あぁ!それあんた鍋だったんですか!いや妙な笠を被ってるなぁと思ったんだ・・・

そうかいそうかい、じゃあそれを使いましょ!

お燗がついた?

よしよし!それでは最初は黒川先生こちらを・・・

左様でございますか・・・

では先にあたくしがいただかせていただきますけれども・・・

おぉ、ありがとうございます・・・それじゃあお先に・・・

・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・

ふぅ~・・・

はぁ~・・・これはまた美味いもんですなぁ・・・

この冷えた体に熱い酒がす~!っと・・・

五臓六腑へ染みわたりますなぁ!

そうでございましょ?これなんですよ!どんなまずい酒でも火の廻りした後は美味く感じるんですよ!

さあ皆さんどんどん飲んで飲んで!

はい?なに?あぁ!もう獅子の肉いける?あぁそうですか!

それじゃあ箸が一善しかありませんから、これも黒川さんの所から順に回していただいて・・・

それからね、二の組が戻ってきてしまいますからね?

あまりゆっくりしないでくださいよ?バクバク、ガブガブやってくださいな?

では、あたくしが先に・・・

獅子の肉というのはあたくしやったことがありませんで・・・

・・・もぐもぐ・・・もぐもぐ・・・

これは大変美味でございますな!ほぉ・・・

こういうものであるならば断わらなければよかった・・・

うん・・・もぐもぐ・・・

体が暖まりますな!獅子の肉というのはどんなに熱くても火傷をしないと言われていますな・・・

そもそも獅子の肉という・・・

そもそもはいいですから!早くまわしてください!

あの頭(かしら)に回してくださいな!

あぁそうっすか!すいやせん!ありがとうごぜえやす!

いやあっしはね!あんまり肉が好きじゃねえんですよ!昔はよくやったんですがね!

・・・もぐっもぐっ・・・いや年を取ってからね!

・・・もぐもぐ・・・歯が悪くなってねぇ!

・・・もぐもぐっ・・・肉がいけねえんでございます!

昔はどんどんどんどん肉食ってたんでございますが、もぐもぐ・・・

近頃!本当にもう・・・もぐもぐ・・・歯が悪くなって・・・

ずいぶん丈夫な歯してますよあんたの歯!みんな食っちまいそうな勢いですよ!

次はほら大宮さんに渡して!
二番煎じを聞くなら「古今亭志ん朝」
古今亭志ん朝が演じる「二番煎じ」は、その粋でリズミカルな語り口が特徴です。彼の滑らかな語りと調子の良いリズムは、聴く者を自然と引き込みます。志ん朝の「二番煎じ」を聴けば、その場の情景が目の前に広がり、まるで自分も物語の一部になったかのように感じられます。

あぁすいません・・・いえあたくしは肉はいただきません・・・

あたくしなんぞはちょいと小唄の稽古をしているもんでございますから、喉が大事でございますので・・・

あたくしはこのネギを頂戴いたします・・・もう肉はいただきません、ネギを・・・

ふぅ~ふぅ~・・・もぐもぐっ・・・

あぁ・・・この喉にはネギが美味いんですねぇ・・・

・・・はふはふっ・・・もぐもぐ・・・

あっ!今熱いネギの汁がちゅっと喉に・・・

あたくし本当にこのネギが・・・

いやいやちょっとあんたあんた・・・

さっきからネギがネギがって言ってますけれども・・・

ネギとネギの間によく見ると肉が挟んである!

あらっ!?気づきましたぁ~?

しょうがないですなぁ!次はあたくしですよ!お箸貸してくださいな!

どれどれ・・・はふっ・・はふっ・・・もぐもぐ・・・

おっ!これは中々美味いもんですな!

さあ皆さんどんどんやっていただいて!

いやぁっはっはは!!いやいや月番さん!

あっしはもうガブガブやってるし、いい心持ちになっちゃった!

どうでしょうね!ここらで木遣りをひとつ!
※木遣りの歌・・・重い材木などを、音頭をとり、かけ声を掛けて運ぶときに歌われる労働歌。

いやいや!こんな所で木遣りなんかいけませんよ!

あのそれじゃあ、いかがでございます?火の用心の歌をね

大丈夫大丈夫!大きな声は出しませんからね!安心してください!

あの黒川先生?拍子木がありますでしょ?

それでちょっと合いの手を入れていただいて!
よろしゅうございますね?それじゃあ・・・

あ・・あ~♪・・・ん♪・・・

ははは~♪・・・んん♪ははあはあはあ♪

早く歌いなさいよ!

それじゃあ・・・

火のぉぉぉぉ~~~~~♪・・・用~~~♪人~~~~♪・・・

火のぉぉぉぉぉぉ~~~~♪廻りぃぃぃぃぃぃぃ~~~~♪
コツン!コツコツ!(拍子木)


拍子木ぃぃぃぃぃ~~~~♪までもぉぉぉぉぉ~~~~♪

嘘ぉぉぉぉぉ~~~♪つくぅぅぅ~~~~♪

さのえぇぇぇぇぇ~~~~♪・・・

あっはっはっは!上手いもんですなぁ!

では次はあたくしが都々逸(どどいつ)を・・・

番!

ん?なに今の『ばん』ってのは?

番の者はおらぬのか!!

お役人だ!いけませんいけません!

見つかる前に鍋隠して!頭!半纏の後ろへ隠して!そうそう!

あちっ!あちあちっ!

どうしました!?

お尻に鍋が・・・

辛抱して辛抱して!

まだ開けちゃいけませんよ?

みなさん大丈夫ですね?

はい、それじゃ開けて開けて・・・

どうも!お役目ご苦労様です!

うむ・・・廻っておらんのか?

今二の組が廻っておりまして・・・

先に廻ってまいりました、一の組が休んでいるところで・・・

ほぉ・・・廻っておるのか!ならばよい!

・・・その土瓶はなんだ!?

・・・あの・・・これは、その・・・

宗助さんが・・・

なんであたしの名前を出すの!

これは「煎じ薬」を飲んでおりました・・・

おお!わしも風邪を引いておる!一杯もらおう!

・・・え?

その煎じ薬を一杯もらおうと言っておるのじゃ!

・・・しょうがない・・・お出しして・・・

ふむ・・・

ごくごくっ・・・うむ・・・

その方らこれをやっておったのか!

ははぁ・・・

これをやっておったのだな!?

ははぁ!!・・・

・・・よい煎じ薬だな!

・・・やった助かった助かった!もう怒られない!

どうぞお飲みいただいて!

う~む・・・こういう煎じ薬はいいな・・・

ん?あの半纏から湯気が出ておる!あれはなんだ!?

あっはっは!あれはもう宗助さんが・・・

だからなんであたしの名前をいちいち出すの!

煎じ薬の口直しを煮ておりました・・・

ほぉ!それももらおうか!

ほぉ、これか・・・もぐもぐっ・・・

うむ、よいな・・・うむ・・・もぐもぐっ・・・

もっとよこせ・・・なるほど、もぐもぐっ・・・ごくごくっ・・・

う~む・・・

口直しがよいと煎じ薬が進むのぉ!!もう一杯もらおうか!

ダメだよ、これ全部食っちまうよ!断っちゃいな断っちゃいな!

・・・あの大変申し訳ございません、煎じ薬が皆になってしまいまして・・・

なに!ないと申すか!

へい、一滴も残っておりません!

う~む・・・ならば仕方がない!

拙者がもうひと廻りしてくる間、二番を煎じておけ・・・
二番煎じを聞くなら「古今亭志ん朝」
古今亭志ん朝が演じる「二番煎じ」は、その粋でリズミカルな語り口が特徴です。彼の滑らかな語りと調子の良いリズムは、聴く者を自然と引き込みます。志ん朝の「二番煎じ」を聴けば、その場の情景が目の前に広がり、まるで自分も物語の一部になったかのように感じられます。
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