昔から大泥棒として有名なのが石川五右衛門という・・・
あの人は釜ゆでの刑というので有名ですな・・・
大きな釜の中にお湯じゃない、油がグラグラいってるところへ、五右衛門をどば~んっと放り込んだ・・・
粉も衣も何もつけない、素揚げですからこれは本当に熱いなんてもんじゃないと思うんですけれども・・・
でも落語の中には石川五右衛門なんて有名どころは出てきません・・・
五右衛門の子分の子分のそのまた手下、そのまた三代子孫なんという随分と安直なところになってますけれども・・・
釜泥を聞くなら「立川談志」
立川談志の「釜泥」は、盗人とその間抜けさが引き起こす滑稽な一幕を描いた一席です。古釜を巡る騒動が、談志の鋭い語りで生き生きと表現され、聴く者を笑いの渦に引き込みます。人間の愚かさと愛嬌が光る、ユーモラスな古典落語です。
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おう!これでみんな集まったか?手下ども・・・

どうも俺達の先祖の五右衛門は評判がよくねえんだ、なにかってと釜茹で釜茹でって馬鹿にされんだろ?

これも全部、釜なんてものがあるからいけねえんだ!どうだ?

みんなで手分けをして世間中の釜という釜を全部盗んじゃおうじゃねえか!

この江戸の町から釜がなくなれば、誰も釜茹でなんて言わなくなるだろう・・・

えっ!じゃあ親分なんですか!?江戸じゅうの釜を盗んじゃう!?

か、釜?え、江戸中の?か、釜を?そ、そんなことしていいんですか?

かまわねえ・・・
なんて冗談を言いながら、さあ江戸中で釜泥棒が流行りだしまして・・・
色んな所で困ってしまったようなんですが、一番困ったのがお豆腐屋さんでございまして・・・

おばあさ~ん・・・ちょいとこっちへ来ておくれ?

はいはい・・・おじいさんお呼びでございますか?

おばあさ~ん・・・ちょいとこっちへ来ておくれ?

お呼びでございますか~?じゃないんだよ・・・

何度目だようちの釜が盗まれたのは・・・

豆腐屋が豆を煮る大釜を盗まれたら商売できないだろう?

今度釜盗まれちまったら、さすがに店は続けられない、店をたたまなくちゃいけないよ?商売できないだろう?

どうしたもんかねぇ・・・と色々考えた結果!

俺は今晩から釜の中で寝てやろうと思ってな!

あらおじいさん、釜の中で寝て一体どうなります?

どうなるってことはない、泥棒が盗もうってんで持ち上げるだろ?

その時にぐらっ!っと揺れるからその時に目が覚めるよ?

そしたら俺が蓋をぽ~んと跳ね上げて、芝居気取りで見栄を切ってやろうと思ってね!

釜中鹿之助!!知らねえかぁーーー!!どんじゃらん~!

なんてなぁ!

はっはっは!よ~よ~よ~よ~!おかま屋!

変な褒め方するねぇ・・・俺が釜中鹿之助って言ったらすぐに目を覚ましてくれ?

大丈夫大丈夫・・・

あたしは歳とって目はかすみましたけど、耳だけは若いものに負けませんから!

ああそうか、じゃあ耳のいいところでパッと起きてな、金だらいかなんかでガンガ~ンと引っぱたいて

泥棒だ!なんて大きな声で叫んだら、長屋の衆がとっ捕まえてくれると思うからな

うまくいきますか?

まあまあやって見なくちゃ分からねえ・・・

そうこう言ってるうちにだいぶ夜も更けてきたな・・・

俺はそろそろ釜の中へ入るから・・・

どうぞどうぞ・・・ちょうど今空いてます

当たり前だ、二人暮らしで釜が混んでてどうすんだよ・・・

じゃあ入るからちょいと抑えてて・・・

よっこらしょっのしょっと・・・

ばあさん?釜の中入ったよ!?

どんな塩梅です?

う~ん・・・住めば都って言うのかねぇ・・・

なんだかシーンとしてていいよ?

そうですか、それじゃあおじいさんお気をつけて!

おやすみさ~い!よっこらせっと!

おばあさ~ん・・・どうして蓋をピッタリ閉めるの?

明日釜開けたらあたし窒息してるよ!?ちょいと蓋ずらしな?

それでね、あたしが釜中鹿之助って言ったら起きるんですよ?

大丈夫!耳だけは!耳だけはいいんだから!

そうかい、頼んだよ・・・

それからね、明日の朝起きてきて、いつものように朝いきなり釜に火つけるんじゃないよ?

あたしを釜から出して、それから豆仕込んで火をつけるんだよ?分かってるね!?

・・・

・・・え?

あぶねえばばあだな!あぶねえ野郎だ本当に・・・

それじゃ寝ちまうよ・・・

さあこれで来るなら来いってんだ、でもなぁ・・・これで泥棒が入ればいいけどな・・・

入らなかったら釜ん中でぼ~っと一人で座ってんのは退屈だよ・・・

おばあさ~ん!寝たのかい?

はい、今横になりましたぁ・・・

やっぱり聞こえてるんだね・・・

あのね、ちょっとこんなことしたいから支度しておくれ?

へ?どんなことです?

いやだからこんなことしたいから!支度しておくれ!

どんなことです?

だからこんなことだよ!

どんなこと?

こんなこ・・・夜が明けちゃうよ!酒の支度だよ!

お釜の中で酒なんか飲む人はありません・・・

ぐずぐず理屈をこねないで早く支度をしなさい!

そうそう・・・はいはい、確かに受け取ったよ・・・

ばあさん!どうしてそうピッタリ閉めたがるの?

物には愛想がなくちゃいけないよ?一杯でいいからお酌して・・・

無理ですよ、あんたお釜の中の小さなおちょこへ上からお酒をつぐなんて・・・

そんな天井から目薬を差すような針の穴を通すような、ありの巣穴へおしっこをするような・・・

うるせえな!分かったよ!一人でやるよ!

ありの巣穴へおしっこって・・・やったことがあんのかあいつは?

やったことがねえと思いつかねえよな・・・昼間何してんだろうな・・・

まあそんなことはどうだっていいんだ、あれ?

もう~なんかつまみでも一緒に乗っけてくれりゃいいのに、ぐずぐず理屈こねてもう・・・

だけどこれまた普段の酒も飲む場所が変わると美味いねぇ、ははは・・・
ってんでちびちびやっておりますと、酒の酔いと昼間の疲れがみえたんでしょう・・・
こっくりこっくりと居眠りをしたかと思ったらいつの間にかぐっすり寝込んでしまった・・・
真夜中時分いくら厳重に戸締りをしてあっても、そこは泥棒商売ですな・・・ 二人そろりと忍び込む・・・
釜に縄をくるっとかける、中にはおじいさんが入ってるとも知らないで・・・
この大釜を表へどっこいしょってんで担ぎ出した・・・

あっはっはっは・・・兄貴うまくいきましたね?

大きな釜ですね、つぶして売ったらいくらになりますかねぇ?

そんなことはどうでもいい・・・

俺たちは先祖五右衛門の供養のためにやってんだ、黙って担げ・・・

黙ってたって見てください?今晩十五夜ですよ?

月夜に釜を抜くってのはこのことですねぇ!

うるせえよ!黙って歩けってんだよ!

ごぉぉぉーーー!・・・す~・・・

がぁぁぁぁぁーーーー!!・・・す~・・・

おい!え?じゃねえよ、釜担ぎながら寝るなよ!

え?いやあっしは寝てませんよ?大きな目がほら!開いてるでしょ?

いびきかいて寝てたじゃねえか!

いやあっしは・・・気のせいですよ!

そうかなぁ・・・確かに聞こえたんだけどな・・・なんだか気味が悪いな・・・

おばあさ~ん・・・おばあさ~ん・・・

おい引っぱたくぞお前!釜かついでる時にばあさん呼んでどうすんだよ!

あっしは呼んでませんよ!空耳ですよ!

そうかなぁ・・・なんか薄気味悪いけど・・・

おばあさん水を一杯おくれぇ!!

釜が化けたぁ!
ってんで、泥棒二人は釜を放って逃げちゃった・・・

おぉ!ぐらっと来たぐらっ!これは来たなぁ!

今俺が見栄をきかせて飛び出すぞぉ!?

よいしょ・・・っこらしょのしょっと!

あらっ!あぁ!しまった!

今夜は家を盗まれた・・・
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