落語ファンなら一度は耳にしたことがある名前、古今亭志ん朝(ここんてい しんちょう)。彼は昭和から平成にかけて活躍し、その洗練された語り口と端正な所作で、多くの人々を魅了しました。
「落語界の貴公子」と称されるほどの気品と色気、そしてジャズのように軽快なリズムで繰り広げられる落語。
この記事では、志ん朝の魅力、演目の特徴、そして彼の名演を聴くためのおすすめ音源を紹介します。
古今亭志ん朝とは?

本名 | 美濃部強次(みのべきょうじ) |
生年月日 | 1938年3月10日 |
没年月日 | 2001年10月1日(享年63歳) |
出身地 | 東京都 |
師匠 | 五代目古今亭志ん生(実父) |
画像参照:日本コロンビアより
志ん朝は、昭和の大名人・五代目古今亭志ん生の次男として生まれました。父の影響で幼少期から落語に囲まれて育った彼は、当初は役者志望でしたが、「噺家は扇子一本で偉くなれる」という父の言葉を受け、1957年に入門。
1959年には21歳の若さで真打に昇進し、異例のスピードで名人の仲間入りを果たしました。
彼の落語は、父のような豪快さではなく、流れるように美しく、洒脱で都会的な語りが特徴。そのスタイルは、時代を超えて愛され続けています。
志ん朝の落語スタイル|話し方・演出の特徴
聞きやすさ | 癖がある ーーーー〇 明瞭で聞きやすい |
アレンジ | 古典に忠実 ー〇ーーー 現代的アレンジ |
知名度 | 知る人ぞ知る ーーーー〇 国民的知名度 |
間(ま)の取り方 | じっくり ーーーー〇 小気味よい |
愛嬌 | 渋い ーーー〇ー 親しみやすい |
粋が似合う江戸弁と洒脱なセリフ回し、絶妙な間合い
- 明瞭で流れるような語り口。耳にスッと入る品のある声
- 登場人物の性格や口調を絶妙に演じ分ける巧みな話芸
- 都会的なテンポ感。まるでジャズのようなリズム
志ん朝の落語は、まさに「洗練」の一言。無駄を削ぎ落とした美しい語りは、まるで上質な映画を観るように、聴き手の脳内に鮮やかな情景を描き出します。
古今亭志ん朝に対する、評価やコメントをまとめました。
噺の展開中、「え~」とか、「あ~」とか、いわゆるFiller words/soundsがほぼ存在しない。
「ってーこと(ということ)」や、「~ですなっ(語尾が上がる)」のような言い回しが小気味よくて、容姿と実にマッチしている。
かなり早口なのだが、滑舌が抜群に良く、聞き漏らすことがない。
まくらも噺の時代背景と現代とを並べて話してくれるので、とても入りやすい。このまくらがまた面白いんだ。
正真正銘の江戸っ子言葉!
どれを聞いても面白い!
私が好きなのは、崇徳院、百川、化け物使いかなー?
これ聴きながらウォーキングしてると、笑ってしまう。時間があっという間。
登場人物では、若旦那がどの話でもいい!
あと、本題の話に入る前の話が面白い。
そして違和感なくすっと本題に入ってくる。
まさに名人!
最初に志ん朝聞いてしまったものだから、他の落語家のものはすべて志ん朝基準、、そこは不幸かな、、物足りなく感じる。
私が知る落語家の中では志ん朝の右に出るものはいない。古典落語を喋らせたらかなうものはいない。声、話し方、間のとり方、どれをとっても抜きんでている。志ん朝の偉大さがわかったのが没後だったので生で聞けなかったのが残念。是非、志ん朝を知らない若い人たちにも聞いてほしい。
参照:みんなのランキングより

私も古今亭志ん朝の落語しか聴けない・・・
古今亭志ん朝に関する逸話
落語界の貴公子
志ん朝は、見た目も声も上品で、よく「落語界の貴公子」と称されました。着物の着こなし、立ち姿、所作の美しさは、まるで歌舞伎役者のようだったといいます。
彼は落語のみならず、テレビドラマ、映画、アニメーションのナレーションなど、多岐にわたる分野で活躍しました。
出演した主なテレビドラマ:
- 『若い季節』(1961年、NHK):若者たちの日常を描いた青春ドラマで、志ん朝はレギュラー出演しました。
- 『スチャラカ社員』(1961年、ABC):コメディタッチのドラマで、個性的な社員たちの奮闘を描きました。
- 『鬼平犯科帳』(1969年、八代目松本幸四郎版、NHK):志ん朝は木村忠吾役を演じ、その演技が高く評価されました。
- 『大江戸捜査網II』(1972年、東京12チャンネル):中原祥馬役として出演し、江戸の事件解決に奔走する姿を描きました。
- 『新・必殺からくり人』(1977年、ABC):噺し家塩八役として出演。旗本の家出身の噺家という役柄を演じました。
出演した主な映画:
- 『歌う明星 青春がいっぱい』(1962年、東映):三島カメラマン役で映画初出演を果たしました。
- 『若い季節』(1962年、東宝):朝太役として出演し、青春群像劇を彩りました。
- 『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年、スタジオジブリ):ナレーターとして作品全体を通じて物語を進行し、その独特の語り口で作品に深みを与えました。
アニメーションの吹き替え
- 『ロボタン』(1966年、フジテレビ):主題歌を担当し、作品に明るい雰囲気を添えました。
談志が唯一「金を払ってでも聞きたい」と言った落語家
立川談志とはライバル関係にありながらも、談志は「唯一、金を払ってでも聴きたい落語家」として志ん朝を挙げました。それほどまでに、彼の落語は完成度が高かったのです。
異常なまでの記憶力と天才肌
志ん朝は、一度聞いた噺をほぼ完璧に再現できるという驚異的な記憶力を持っていました。短期間で膨大な演目を覚え、一流の落語家へと成長した背景には、この天才的な能力があったのです。
古今亭志ん朝のおすすめ演目3選
「明烏」|志ん朝お得意の若旦那が活きる一席
志ん朝といえば、育ちの良い若旦那の描写が絶品。この「明烏」では、堅物の若旦那・時次郎が吉原へ連れ込まれる騒動を、軽妙かつ流れるような語り口で展開します。
彼の演じる時次郎は、無邪気で品のある若旦那像が見事にハマり、聴いているだけでその場の空気が伝わってくるよう。
さらに、吉原の雰囲気を過度に艶っぽくしすぎず、粋で洒脱な演出に仕上げているのも志ん朝らしさ。若旦那ものが好きなら、まずはこの一席から!
▶ 他のおすすめ演目:「船徳」
「お見立て」|花魁の色気と男たちの愉快な駆け引き
志ん朝の落語は“色気”と”滑稽さ”のバランスが絶妙。
この「お見立て」では、花魁と客の間で行き来する若い衆のドタバタ騒ぎで、江戸の遊郭文化の粋をたっぷり味わえる。
特に彼の演じる花魁は、艶っぽさと気高さが同居していて、まるで本当に目の前にいるかのよう。一方で、花魁に翻弄される若い衆はどこか憎めなく、志ん朝の細やかな人物描写が光る。
リズムの良いテンポと江戸の情緒が絡み合い、最後まで飽きさせない一席。
▶ 他のおすすめ演目:「五人廻し」「品川心中」「三枚起請」
「文七元結」|テンポの良さと重厚な人情噺の融合
人情噺はじっくり聴かせる演者が多い中、志ん朝はこの「文七元結」を小気味よいテンポで展開しつつ、しっかりとした重厚感も持たせているのが特徴。
彼の語り口は流れるようで心地よく、長兵衛の人間味が鮮やかに浮かび上がる。
ただし感傷的になりすぎず、江戸っ子の「人情はあれど、情に流されない粋」が感じられる仕上がりになっているのが志ん朝らしいところ。
ラストに向かう高揚感と満足感は、何度聴いても見事。志ん朝の人情噺の中でも、ぜひ押さえておきたい一席。
▶ 他のおすすめ演目:「子別れ」「芝浜」
古今亭志ん朝の音源はどうやって聞く?
媒体 | 備考 |
CD | 10種類以上の音源が存在 |
サブスク(スマホ) | Amazon Audibleで2種類のみ |
Youtube | 複数のアップロードあり(無断アップロード) |
CD|作品が多く、手に入れやすい!

画像参照:Otonanoより
志ん朝の音源は、CDが最も充実しており、多くの演目が収録されているのが魅力です。特に「古今亭志ん朝大全集」などの全集シリーズは、代表作を網羅しており、志ん朝の落語を深く味わうのに最適。
また、ゲオの宅配レンタルなどを利用すれば、購入せずに手軽に楽しむことも可能です。

CDは一度借りてしまえば、スマホに入れたりダビングすることは簡単なので、比較的志ん朝の音源を手に入れるのは簡単だと思います。
サブスク(スマホ)
残念ながら、古今亭志ん朝の音源は、各音楽サブスクにはなく、唯一Amazon Audibleに「紙入れ」と「へっつい幽霊」の音源が残っています。
はじめてAmazon Audibleに登録する方は、30日間無料で聞けるので試しに聞いてみるのはありかもしれません。
Youtube
違法アップロードではありますが、「古今亭志ん朝」と検索すると何種類もの音源と映像を見ることができます。
オススメはできませんが、古今亭志ん朝の音源は是非聞いてみてください。
まとめ
古今亭志ん朝は、明瞭で流れるような語り口と端正な所作を持ち、「落語界の貴公子」と称されるほどの品格と色気を兼ね備えた名人です。都会的なテンポと洒脱なセリフ回しが魅力で、聴けばたちまち江戸の情景が目に浮かぶような語りを展開しました。
おすすめの演目としては、若旦那ものの「明烏」、色気と滑稽さが同居する「お見立て」、人情とテンポの良さが光る「文七元結」など、異なるジャンルの落語でも高い完成度を誇るのが志ん朝の凄さです。
音源を楽しむなら、CDが最も充実しており、ゲオ宅配レンタルでも手軽に聴けるのがポイント。手軽に試したいならAmazon Audible(「紙入れ」「へっつい幽霊」)も選択肢になりますが、配信されている演目は限られています。YouTubeには無断アップロードの音源もありますが、公式ではないため注意が必要です。
まずは代表作から聴いて、志ん朝の粋で洒脱な語りを堪能してみてください!
コメント