江戸時代には夜鷹そばというものが大変に人気がございました・・・
これが明治の六、七年になりますと鍋焼きうどんというのが流行ったんだそうですな・・・
寒い晩になりますと、この鍋焼きうどんの売り声が方々で響いたんだそうでございますが・・・
うどん屋を聞くなら「柳家小さん」
柳家小さんの「うどん屋」は、彼の柔らかく穏やかな語り口が、噺の温かさを引き出し、聴く者にほっとするような心地よさを与えてくれる一席である。小さんの語りの魅力が詰まった作品と言えるだろう。
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な~~べ~~や~~き~~うど~~ん~~~♪
おお~い!うどん屋ぁ!あの○%×$☆♭#▲!※・・・
おっとっと!お客さんだいぶ酔ってますな!?
揺らさないでくださいよ!荷が崩れますんで・・・下ろします下ろします・・・
はぁ~うどん屋ぁお前に会えてよかった本当だよぉ・・・
ちょっとそれどけて火を・・・
あぁ寒かったぁ火に当たりたかったんだ・・・
あぁ暖かい・・・だけどいいなぁうどん屋お前なぁ!
何がってお前、こう寒い晩でも火を担いでられるからいいなぁ!
そうして世間を広く歩いてぇ・・・
あっ!そうだお前これだけ歩いてりゃ仕立屋の太兵衛ってのを知ってるか?
知らねえはずはねえぞ?知ってるはずだ、顔の広い男だよ!
一人娘がいんだ!今年で十八になる美ぃ坊ってんだ・・・
それが今晩同じ商売仲間から婿をもらってよ・・・
俺は以前隣で暮らしてたもんだ是非来てくれってんで婚礼に行ったよ
そしたら久しぶりに俺の顔見て、『おじさんおじさん~!』って覚えててくれてさぁ!
嬉しくなっちゃったぁ・・・
そのうち綺麗な花嫁衣装になってさ・・・
俺の目の前でピタッと手を添えて・・・
『さておじさんこの度はわざわざ遠いところありがとうございます・・・』
ってそう言うんだよ・・・うん・・・
俺ぁ本当に嬉しくなっちゃった!
こんなに小さかった子がさぁ!大きくなって『さてこの度は』なんてのは、よっぽど学問があるか足袋屋さんじゃなきゃ言わないよ?
だから本当に・・・うん・・・嬉しくなっちゃったなぁ・・・うん・・・
なぁ!うどん屋!なぁ!
それは大変におめでとうございます!
おいおい!なんだそれおかしいだろ!?
いや何がってさ、本当にここの底からおめでたいなぁって思ったら『大変おめでとうございます』なんて「大変」なんて付けねえと思うなぁ!
素直におめでとうございますと言うと思うよ?
ああそうですか、じゃあ・・・おめでとうございます!
じゃあってのはなんだ!おかしいじゃねえかよ!
勘弁を願います・・・
はっはっは・・・まあしゃーねえやなぁ!
いやぁだけどなぁ・・・あぁ暖っけえ・・・
おめえは本当にあれだよ、この寒いのに火を担いでられていいよなぁ・・・
世間を広くあるいてさぁ・・・
そうだ!世間を広くっていやぁおめえ仕立屋の太兵衛っての知ってる?
あ、あぁ・・・
そりゃ知ってるやなぁ!顔の広い男だよ・・・
一人娘の今年十八になる美ぃ坊ってのがいんだよ!
あの今晩同じ商売仲間から婿さんもらったんですよね?
あは!やっぱり知ってんだ!そうかそうか!顔の広い男だ!そうだ、そうだよな!
俺が以前隣で暮らしててさ・・・久しぶりに会ったのに
おじさんおじさん!ってそう言って覚えててくれたでしょ?
・・・
見てたぁ!?見てたんだ!そうか!見られちゃしょうがねえやなぁ!
そしたらなぁ、本当に綺麗な花嫁衣装になって、俺の目の前にぱっと手をついて・・・
『おじさん、さてこの度は』とこう言ったんですよね?
あっいたんだそこに!なぁんだ、いたんだったらしょうがねえやぁ!見られてたんだなぁ!
めでたいやなぁ!うどん屋!
えぇ、おめでとうございます!
・・・なんかおめえ愛想がないね・・・
本当におめでたいなと思ったら、『大変おめでとうございます』くらいは言うよ?
いやでもさっきは・・・
いい、いい!そういう顔すんなよ、なっ?
だけどほらっおめえのおかげで手が暖まっちゃった・・・
ありがとよ!じゃあまた来るよ!あばよぉ!
ちょ!ちょっとお客さん!うどんを!
ったくあの野郎・・・ただ喋ってうどんも食わずに暖まって行っちまいやがった・・・
どうにもしょうがねえなぁ・・・
確かに昔から大声で呼ぶ客なんてのは儲けがねえって言うが全くだ・・・
馬鹿馬鹿しい話もあるもんだ・・・よっこらしょっと・・・
うどん屋を聞くなら「柳家小さん」
柳家小さんの「うどん屋」は、彼の柔らかく穏やかな語り口が、噺の温かさを引き出し、聴く者にほっとするような心地よさを与えてくれる一席である。小さんの語りの魅力が詰まった作品と言えるだろう。
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な~~べ~~や~~き~~うど~~~ん~~~~♪
うどん屋さん?・・・うどん屋さん?
へ~~い!
子どもが寝たんで静かにして!
・・・
子どもが寝たなんて知らねえや、ったく・・・
うぅ寒い寒い・・・表通り出よ・・・よいしょっ・・・
な~~べ~~や~~き~~うど~~~ん~~♪
おぉ~い・・・うどん屋さぁ~~ん・・・うどん屋さぁ~~~ん・・・
お?ずいぶん小さな声だな・・・
あぁ~!大きなお店だ!なるほど、ご主人に内緒で奉公人が大勢で食おうってんだ・・・
そうなりゃすっかり売れちまうってやつだな・・・
じゃあご主人に見つかんねえようにこっちも合わせてやんなくちゃいけねえ・・・
へぇ~~い・・・
うどんを下さ~い・・・
へぇ~~い・・・おいくつ?・・・
ひとっつ・・・
・・・へぇ~い・・・
・・・なるほど、この人は試しに一つ食ってみようってんだ・・・
これで美味かったら後からぞろぞろみんなが出てくるんってんだな?
俺が帰ろうとすると、『うどん屋さぁ~ん!後20杯お願いしますぅ・・・』なんてね!?とびっきりうまく作ってやろう!
お待ちどうさま・・・
ありがとうございます・・・
・・・ふぅふぅ~・・・ずるずるっ!ずずっ!・・・ずずっ!・・・(うどんをすする音)
はぁ~・・・
ごちそう様、おいくら?
はいどうぞ・・・
・・・頂戴いたします・・・それじゃまた・・・
お~い・・・うどん屋さぁ~ん・・・
きたきた!
へぇ~い・・・!!
お前さんも風邪を引いたのかい?
うどん屋を聞くなら「柳家小さん」
柳家小さんの「うどん屋」は、彼の柔らかく穏やかな語り口が、噺の温かさを引き出し、聴く者にほっとするような心地よさを与えてくれる一席である。小さんの語りの魅力が詰まった作品と言えるだろう。
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