一言で「粗忽の使者」を解説すると…
忘れっぽい使者の口上を思い出してもらうために、尻を思いっきりつねる噺。
主な登場人物
御上からの口上を伝えにきた忘れっぽい使者、地武太治部右衛門でござる!
治部右衛門の口上を受け取る田中三太夫です!
治部右衛門の尻をつねって口上を思い出させようとした大工の中田です!
粗忽の使者の詳細なあらすじ
杉平柾目正という大名の家来である地武太治部右衛門は、生まれつきの粗忽者だが、なぜか殿様に気に入られている。
ある日、殿様の親類である赤井御門守が「杉平家には面白い家来がいる」と聞き、その家来に会いたいと言い出す。そこで殿様は治部右衛門を使者として赤井屋敷へ行かせることにする。
しかし、出発時から治部右衛門は、馬を豚と言い間違えたり、馬に後ろ向きに乗って「この馬には首が無い」と騒いだりと、早速その粗忽者ぶりを発揮する。
赤井屋敷に到着し、家臣の田中三太夫に使者の口上を求められるが、治部右衛門は口上を思い出せない。治部右衛門は、子供の頃から物忘れをした時に尻をつねられると痛みで思い出すという癖があり、自分で尻をつねるが効果がない。そこで三太夫に尻をつねるよう頼むが、それでも思い出せない。
三太夫がさらに力のある者を探し、つねるようにさせるが、やはり効果はない。治部右衛門は「これで口上を思い出せなければ切腹する」と宣言する。
この様子を見ていた大工職人の留さんが、三太夫に代わり尻つねり役を申し出る。留さんは五寸釘を指で引き抜けるほど力があると豪語し、治部右衛門の前に出る。治部右衛門はすでに三太夫のことも、尻をつねってもらうよう頼んだことも忘れている。
留さんは商売道具の釘抜きを使い、最初は手加減して尻をひねるが、それでも治部右衛門は感じない。そこで思い切りひねると、ようやく治部右衛門が「思い出した!」と叫ぶ。
三太夫「それで、お使いの口上は?」
治部右衛門「屋敷を出る折、聞かずに参った」
粗忽の使者を聞くなら
粗忽の使者を聞くなら「柳家小さん」
柳家小さんの「粗忽の使者」は、忘れっぽさが生む滑稽さと哀愁が交錯する一席です。頼まれごとを巡る行き違いが、次第に大きな混乱を招く様子を、小さんが巧みに描き出します。江戸の風情と人情が溢れる、味わい深い古典落語の一作です。
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