一言で「五人廻し」を解説すると・・・

吉原の花魁・喜瀬川を巡って、待たされた客たちが次々と若い衆に不満をぶつける噺。
主な登場人物

五人の客を取った喜瀬川花魁です♡

喜瀬川花魁の最初の客、杢兵衛大尽でがす!

喜瀬川の客対応に追われた若い衆です!
五人廻しの詳細なあらすじ
喜瀬川という人気花魁が、五人の客を取ったものの、最初の客・杢兵衛大尽の部屋に入ったきり、ほかの客を回らない。待たされた客たちは次第に不満を募らせ、若い衆は苦情対応に追われる。
一人目の客は、料理だけ食べて姿を消してしまった。
二人目の客は、長々と吉原の歴史を語り始め、最後には玉代を返せと主張する。
三人目の客は、若い衆に嫌味を言いながらも、最後は東京市の焼印を押すと言い出す始末。
四人目の客は、買ったはずの花魁がいなくなったと大騒ぎし、やはり玉代を返せと言う。
困り果てた若い衆が喜瀬川と杢兵衛大尽の部屋へ行くと、喜瀬川は「この人のそばを離れたくない」と言い、大尽も「もうすぐ夫婦になるから、少しの間ほかの客を回ってやれ」と説得。しかし、最終的には杢兵衛大尽が四円払って客たちを納得させる。
喜瀬川「もう一円はずんで、私にちょうだい」
杢兵衛大尽「われがそう言うなら、一円やるべ。だけど、これもらってどうする?」
喜瀬川「それじゃ、これお前さんにあげる」
杢兵衛大尽「おらがもらってどうする?」
喜瀬川「お前さんも、これ持って帰っておくれよ」
五人廻しを聞くなら「三遊亭圓生」
上品な語り口と巧みな人物描写が魅力の三遊亭圓生。「五人廻し」では、個性豊かな客たちを絶妙に演じ分け、江戸の風情をたっぷりと味わわせてくれる。間の取り方も秀逸で、落語初心者でも楽しみやすい一席。粋で品のある演じ方が、花魁や大尽といった登場人物にぴったりとハマり、圓生ならではの格調高い落語を堪能できる。
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「五人廻し」を通して学ぶ!江戸・吉原の制度とルール

「五人廻し」は、江戸時代の遊郭・吉原を舞台にした落語であり、吉原特有の仕組みやルールを知ることで、より深く楽しめる噺である。本記事では、当時の吉原の制度や遊女の生活、客とのやり取りに関するルールを整理し、「五人廻し」との関係を掘り下げる。
1. 吉原の基本制度
江戸時代、幕府公認の遊郭は「公許遊郭」と呼ばれ、吉原(江戸)、島原(京都)、新町(大阪)の三大遊郭があった。特に吉原は最大規模を誇り、格式の高い遊郭として知られていた。
- 元吉原と新吉原
- 1617年、江戸幕府によって日本橋近くに遊郭が設置され、これが「元吉原」。
- 1657年の明暦の大火により、浅草日本堤へ移転し、「新吉原」となった。
- 「吉原」と言えば基本的に「新吉原」を指す。
- 遊郭の運営
- 吉原は町全体が壁で囲まれ、「廓(くるわ)」と呼ばれる。
- 遊郭内の出入りは厳しく管理され、夜には大門(おおもん)が閉じられた。
- 遊女が自由に外へ出ることは許されず、「籠の鳥」とも言われた。
2. 吉原の遊女のランクと役割
吉原には数多くの遊女がいたが、身分により待遇や接客スタイルが異なった。「五人廻し」のような話は、特に格式の高い遊女のもとで繰り広げられた。
- 遊女の身分制度
- 太夫(たゆう):最上級の遊女で、教養・芸事に秀でており、指名には格式が必要。
- 花魁(おいらん):太夫に次ぐ高級遊女で、客を選ぶ権利を持つ。多くの落語に登場するのはこのランク。
- 格子(こうし)女郎:中級クラスの遊女で、花魁の次の格付け。
- 端女郎(はしじょろう):最も低いランクの遊女で、大衆向け。
「五人廻し」の主人公・喜瀬川は花魁クラスの遊女と思われる。
3. 吉原の遊び方とルール
吉原には、独特の遊び方があり、客が守るべきルールがあった。「五人廻し」にも反映されている点を挙げる。
- 初回は「馴染み」になれない
- 初めて吉原に来た客は、いきなり上級遊女と「本気の付き合い」にはなれない。
- まずは「一見(いちげん)」として扱われ、何度か通うことで「馴染み客」となれる。
- 登楼の流れ
- 揚屋(あげや)で支度
- 遊女と会う前に、客は「揚屋」という場所で酒を飲み、準備をする。
- 廊下での引き合わせ
- 遊女は、客の様子を見て、気に入らなければ断ることもできた。
- 遊びの時間
- 客は遊女と時間を過ごすが、時間管理は「廓の法」に従っていた。
- 揚屋(あげや)で支度
- 「五人廻し」の背景
- 本来、遊女は時間が来れば次の客の元へ行くのが原則。
- しかし、喜瀬川は杢兵衛大尽の元にずっと留まり、ほかの客を無視している。
- これはルール違反だが、花魁クラスならではの「特権」だった可能性もある。
4. 吉原の金銭事情
吉原では、客はさまざまな費用を負担しなければならなかった。「五人廻し」にも「玉代(ぎょくだい)」という言葉が登場する。
- 玉代とは?
- 遊女との遊びにかかる基本料金のこと。
- 一般的に、花魁クラスの遊女は高額で、大尽でなければ頻繁に通えなかった。
- その他の料金
- 部屋代:遊郭内の部屋を使用するための費用。
- 揚屋代:遊ぶ前に準備するための費用。
- 料理・酒代:遊びながら楽しむ飲食代。
「五人廻し」では、待たされた客たちが「玉代を返せ!」と騒ぐが、これは通常の遊郭ではありえない行為である。
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