絶対に信じないものも追い込まれると絶対に使ってしまうことが学べる日本昔話落語【三枚のお札】

 

昔のお話でございまして、ある山寺に和尚さんと小僧さんが暮らしておりまして・・・

 
       
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お~い、小僧さんや!小僧さんや!
小僧さんよ~い!お~い小僧さん!
もう嫌んなっちゃうなぁ・・また和尚さんが呼んでる・・・
これ小僧さん、小僧さんよ~い!
はいはい!ただいま参ります!
なんですか和尚さん?
実はな、明日寺に檀家の衆が集まるんじゃが、お前さん裏山へ行って栗を取って来てはくれまいか?
えぇ!裏山に栗拾い!?嫌だよ和尚さん勘弁してくれよぉ!
何もそんなに嫌がることはない、すぐ裏の山じゃ遠くなかろう
和尚さん何にも知らないからそういうこと言うんだい!裏山には山姥(やまんば)がいるんです!
山姥なんぞ別に怖いことはなかろう
他人事だと思って、もしおいらが食われちまったらどうするってんですか!?
まあお前がそういうことを言ってくるだろうとは思っておったからな、ここに三枚のお札を用意した
お札ぁ?
もし山姥がでても、このお札に頼めばお前を守ってくれる、安心して行ってきなさい
 

なんてんで、小僧さんしぶしぶ裏山の方へ栗拾いで出掛けまして・・

 
本当に和尚さんもいい加減だなぁ・・こんな紙切れで山姥が退治できるんなら苦労しないよ・・
 

ってなことをぶつぶつ言いながら栗拾いを始めるってとこれが意外に面白いもんでして・・・

それ一丁~~!二丁~~!へへっおもしれえなこりゃあ
 

そこらへんに落ちている細い枝を取るってとそこに栗を刺して、それをかごの中に放り投げて遊んだりなんかして・・

 

どんどんどんどん栗を放り投げてるうちに、小僧さんもさすがに飽きてきまして、座り込むってと辺りが急にパッと暗くなり初めまして・・・

 
 
どうしてこんな急に暗くなっちゃうの・・・じょ、冗談じゃない、こんな暗い中山奥に1人になっちゃって・・山姥でも出たらどうするんだってんだい・・
 

小僧さんもうびくびくびくびくしているってと、森の陰からぬっと出てきましたのは、年頃7、80にもなろうかというお婆さんが出てきまして、

おやまあ、こんな夜中に小僧さんどうなさった?
ど、どうって栗を拾っていたら急に暗くなって・・・
山じゃよくあることじゃ・・・こんなところにいて、山姥にでも見つかったら取って食われちまうぞ・・
 

なんてんで、今日はもう遅いからってんでお婆さんに連れられて、山ん中の一軒屋へと案内されまして・・

朝になったらわしが道案内してあげるで、今晩は早う寝るがいい
 

今晩はお婆さんの家に泊まることになりまして、小僧さん布団に入りまして、どれくらいの時が経ったんでしょうか・・

障子を挟んで隣の部屋から、さっ・・さっ・・っという音が聞こえてまいりまして、その音で起きました小僧さん、何の音かなと思って障子をすっと開けて見てみるってと・・

お婆さんが、三尺ばかりあるような大きな包丁を丁寧に研いでおりまして・・

こんな夜中にどうして包丁なんて研いでるんだ?
ほぉ・・・よぉ研げた・・ふっふふふ・・久しぶりに美味そうな小僧が・・へっへへへ・・・
 

っと言わんばかりに、雷がバーンとなったかと思うと、おばあさんの口が大きくさけ、肌は不気味な緑がかった色になったかと思うと、今度はぐっと暗い不気味な紫色になりまして、目は人あらざるようなぎょろっと大きな目をしておりまして、牙が生え、図体が一回りも二回りも大きくなりまして、今までの優しそうなほがらかな雰囲気のお婆さんが山姥へと変わってしまった・・

 
 
た、た、大変だ山姥だ・・に、逃げないと食われちまう大変だこりゃあ・・
へへへ・・どう食ってやろうか・・
お婆さんお婆さん!
なんだ小僧まだ起きてるのか・・
お、おいら便所行きてえ!
うるさい小僧だ・・・
そんなもの我慢して早く寝るんじゃ!
我慢できねえ!便所行かねえととても眠れねえよぉ!
しょうがない奴だ・・
 

ってんで、小僧があんまり騒ぐもんで、山姥は小僧の腰に縄をまいて、小僧を外に出した

 
逃げたら承知しないよ・・・
冗談じゃないやい、逃げたら食われちまうんだ・・
 

さすがは小僧さん、日頃いくら怠け癖があるといいましても、和尚様の所で修行している分だけあって、腰にまかれた縄をはらりと解くと、便所の柱に縄をくくりつけた・・

 
 
和尚さんのくれたお札に頼んでみるか・・
お札さんお札さん・・どうかおいらの代わりに便所で返事をしてください・・
さぁ逃げちおう逃げちまおう・・
小僧・・いつまでふんばっているんだ・・これぇ!まだか!
まだまだもうちょっと!
それにしても、小僧を食うのは久しぶりじゃな・・新鮮な所を塩でもつけてぺろっと・・いやしょうゆもいいな・・山椒をふって・・くくく・・
それにしても便所の長い小僧だな・・まだか!?
まだまだ、まだちょっと!
ええ~い!いいかげんしろ!
 

山姥が縄を力いっぱい引くってと、柱がバキッと折れて山姥の顔に当たった・・

なんだこりゃあ・・小僧~・・逃げたな!!逃げられると思ってるのか!
 

ぱっと消えたかと思うと、小僧の元へ雷がドーンとなるのと同時に山姥が後ろから追いかけてきまして・・

逃げられると思うなよ!小僧ぉ~~~!!
わわっ!なんだいなんだい!うわぁぁぁぁ!
待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
うぅぅぅぅ!!お札さんお札さんおいらを助けておくれぇ!!
 

っと頼んで札を後ろへひょいと投げ捨てるってと、お札は川になりまして、山姥を押し流した・・

や~~い!や~~~い!山姥なんてわけないや!ざまあみろってんだい!
小僧ぉぉぉぉぉぉぉ!!
流れに逆らってきたよ~!とんでもない婆だ!ひえ~~!
待てえええぇぇぇぇ!小僧!あたしから逃げられやしないよぉぉぉぉ!!
さ、最後のお札だ!なんでもいいから助けておくれぇ!!
なんだなんだ!
 

今度はお札が砂の山になりまして、山姥は足を取られて、進めない・・今だ!と思うと小僧さん一気に無我夢中で山を駆け下りた・・・

 
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助けてぇ~~~!和尚さん和尚さん和尚さん和尚さ~~~ん!!大変だ大変だ!
なんじゃ騒がしい・・栗はどうした?
栗なんてどうでもいいよ和尚さん!大変なんだ!山姥がここに来るんだよぉ!
和尚さんもおいらみたいにどっかに隠れないと、山姥に食われちまうよ!
全くあわただしいやつじゃ・・せっかく餅を焼いて食わせてやろうかと思ったのに・・・
小僧ぉぉぉぉ!!・・・ふうふうふう・・
和尚!!今ここへ小僧が来たろ!!
ん?小僧なんて知らん・・
和尚のくせに嘘を言うでねえ!小僧を出せ!
出せと言われても困ったのう・・小僧を渡せば食ってしまうだろう?
そりゃあ当り前じゃ、わしゃあ山姥じゃからなぁ!
ふ~む・・あんなどうしようもないやつでも食われちゃうと寺が不便するでなぁ・・
じゃあこうしよう、わしと術比べをせんか?
術比べぇ?
そうじゃ術比べじゃ・・・そんでわしが負けたら小僧を渡すというのはどうじゃ?
ひゃっははっはっはっは!面白い!どんな術比べだ言ってみろ!
そうじゃな・・では一尺ばかりに小さくなれるか?
 

ぱっと光ったかと思うと山姥が一尺ばかりに小さくなりまして・・

どうじゃこんな術はどうということはない・・
ほう・・大したもんだな・・それじゃあこれはどうじゃ、豆粒ほどの大きさになってわしの手の上に乗れるか?これは出来んじゃろう?
・・・こんなもんでどうじゃ?さあ今度は和尚の術を見せろ!
ん?わしの術か?
この餅に山姥を挟んで食べる術じゃ・・
 
 
おわり
 
 

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こんなん子供の時、見たらトラウマやで・・・わい今でも怖いもん・・
 
 
 
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