昔から『親のすね、かじる息子の歯の白さ』なんてことを言いまして・・・
親のすねをかじってくらそうなんていう若旦那というのは話の方にもよく出てまいりまして・・・
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若旦那!?今日はどのあたりでおとめいたしましょう!?

そうねぇ、まああんまりうちの近くまで行って親父に見つかったら面倒だから・・・

あっ、このあたりで降ろして降ろして・・・よっこらせのせっと・・・

いやぁいつもすまないねぇ!これはお礼だから

ありがとうございます!申し訳ございませんねぇ、いつもこんなに頂戴致しまして!

いいのいいの!そんなにたくさんやってるわけじゃないから!

余ったら土地でも買って?

いやそれほどもらってはいないんでございます・・・

それじゃまた明日ね!はいはい!よろしく!は~い!どうも・・・

はっはっは・・・いいねぇ・・・

ああやって車屋が去り際にペコリペコリ振り返って頭を下げて遠ざかっていくあの後ろ姿を見る・・・

そうすると、今日もたくさん遊んだなってこういう気がしていいなぁ!

さあさあ帰ろ帰ろ!うぅ~冷えてきたねぇ・・・え~っとこの角を曲がるってと・・・

あたしのうちだ・・・いいうちだねぇ、我が家ながらこういう所で育つってのはやっぱりいいねぇ・・・

ここで育ってあたしは幸せだねぇ・・・

これで中に親父が居なきゃいいんだけどなぁ・・・

まあまあでも、ああやって親父が一生懸命働くからこうしてあたしが遊んで暮らせるってやるだね・・・

ささっ、帰って寝ましょ寝ましょ・・・

番頭さ~ん・・・番頭さん・・・番頭さん今帰ったよ?あたしだよ?

佐平さん?佐平さん!・・・照るどん?・・・金どん?・・・定吉?

どなたですかな!夜分遅くに戸をどんどんお叩きになるのは!

親父だよ・・・一番悪いのが起きてんねぇ・・・

すいませんおとっつあん、あたくしでございます!遅くなりまして申し訳ございません!

いやぁ申し訳ございませんなぁ!商人の店は十時限り!

また明朝お越しください!はいさようなら!

いやちょっ、ちょっとおとっつあん!?あたしです!あたしですよ!

はい?あたしさん?

いやそんな人いませんで!あたしですよ!

あたしあたしじゃ分かりませんなぁ!お名前をはっきりとおっしゃっていただきましょ?

あなたの倅の孝太郎です!

あぁ!孝太郎のお友達の方!今日はよく来てくださいました!

うちにもえぇ!孝太郎という倅がおりましたが、これが遊び放題!店の金使い放題でございましてなぁ!

こんな者を置いておきますと、将来ろくな者にならない!

昼間親戚の者同士で集まってこれを勘当ということに致しましたので・・・

本人に会いましたら!どうぞよろしくお伝えください!はい!それじゃ・・・

え!?勘当?そりゃ困る!

おとっつあん!すいません!あの明日からちゃんとしますんで!

明日から明日からなんてのはもう聞き飽きた!!

とお伝えください・・・

ねぇ~そんなこと言わないでおとっつあん!お願いしますよ!

だ、だって困るでしょ?あたしここの一人息子ですよ?

跡取りですよ!あたしが居なくなったらどうするんです!?

そんなことは心配ねぇ!養子でもなんでももらって!ちゃんとしますから、何にも心配いらねぇ!この馬鹿!

とお伝え下さい・・・

そんなおとっつあんお願いしますよ!ねぇ・・・おとっつあん?

じゃあ言わせてもらいますよ?

あたしだってねぇ!何もこのうちに生まれたくて生まれたわけじゃないんですよ?分かりますか!?

おとっつあんとおっかさんが何年も前にどういう相談があったか知りませんけれども、あたしというものが生まれました、さて!

出来が良ければ入れましょう!出来が悪けりゃおっぽり出そうなんてそんな料簡ありますか!?

生産者の責任が・・・

何が生産者の責任だ!馬鹿野郎!黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって!

どうして店の手伝いをしよう、働こうという気にならねえ!

お隣の清六さんを見習え!毎日一生懸命親父さんと一緒になって朝から晩まで真っ黒になって働いてんだろ!?

こないだなんてそうだ!おとっつあんの方が具合が悪いってんで、おかゆでもお持ちしましょう、薬でもお持ちしましょう、腰が痛けりゃさすりましょうって・・・

感慨しい看病の仕方だ・・・私は脇で見ていて涙が出た!

おめえはなぁ!清六さんの爪の垢でも煎じて飲んだらどうだ!

ったく・・・何かあるってと清六さん清六さんって・・・

だったら清六さんを生めばよかったじゃねえか・・・

何を言ってんだ馬鹿野郎!

ああそうですか!じゃあもうあたくしはいいですよ!

おっぽり出されりゃあたくしはもう生きていけないんですから!

死んじゃうんですからね!どうせ死ぬんだったらただじゃ死にませんよ?

この店の軒先で首くくりますよ!?それでもいいんですか!?

あぁ~あ、どんどんやれ!首くくれ馬鹿野郎~!

昔からな、死ぬ死ぬって言ったやつに死んだ試しはねぇんだ!どんどんやれぇ!

てるてる坊主の代わりにすらぁ!

あぁそうですか!分かりました!

じゃあね!このうちはあたしのもんだと思うからいいうちだってんです!

これが人の手に渡るんだったらこんなうちあったって邪魔なだけだ・・・

火つけますよ!?さぁどうします!?今日は風が強いですよ?メラメラっと来ますよ?

ケツが燃えだしてから、ああ許しておけばよかったなんて後悔したってもう遅いですよ?

どうしますおとっつあん!?さぁ!付けますよ?どうします!?

あの馬鹿・・・畜生、やりかねねぇな・・・

よ~し見てろ?この六尺棒ですねをかっぱらってやる!
ガラっ!

せい!はっ!

ひゃっ!ほいっ!危ねぇ~!さぁさぁ逃げろ逃げろ~!

おぉ追っかけて来た!ずいぶん足が速いね!あの角曲がろう!

まだ追いかけてくるねぇ!親父ってのは足が速い・・・

いやぁったったったったぁ!どうにもしょうがねぇな・・・

よし!あの天水桶の裏に隠れちゃおう・・・

・・・

あっ来た来た来た、速いねぇ・・・

ったったったったったぁ!!ビュ~ン!!

うわぁ・・・親父は足腰丈夫だねぇ・・・

あそこまで元気なんだ、こりゃ当分死なねえなぁ!うん・・・

親父が向こうへすっと行ったからな!あたしはこっちへ行こう!

こっちへ行くと・・・あららら、あたしの方が先にうちへ帰って来ちゃったよ

じゃあお先に失礼しますっと・・・

はぁはぁはぁ・・・あの野郎どこ行きやがった!畜生!

全くもう足だけは速いんだ、変なとこだけ俺に似やがって・・・

よいしょっ・・・なんだ?・・・うち閉まってるね・・・・

お~い!番頭さん!番頭さん開けておくれ!おいわしだ!

お~い佐平さん!?照るどん?金どん?・・・定吉!?

どなたですかな!?夜分遅くに戸をどんどんお叩きになるのは!

あの野郎入ってやがんな!てめえこの野郎!おい!開けろ!

申し訳ございません、商人のうちは十時限りとなっておりますので、また明朝お越しください!

馬鹿野郎!わしだ!わしだ!

はい?わしださんですか?

わしださんってやつがあるか!

いやぁわしだわしだではこれは分かりませんで、お名前をはっきりとお願いいたします・・・

馬鹿野郎この野郎!おめえの親父の孝右衛門だ!

あっ!孝右衛門のお友達の方!これはよくお訪ね下さいました!

うちにも孝右衛門という親父がおりますが、これが働きっぱなしでございまして、まあ放っておきますと末にはろくな者にならない・・・

昼間親戚で集まりまして、これを勘当・・・

この野郎!親を勘当にする馬鹿があるか!だ!

うるせえ!他人事に言って聞かせりゃいい気になりやがって!

少しは清六さんの親父を見習え!

小遣いがないならお前にあげよう、働きたくないんだったら休みなさい、吉原に行くんだったら一緒に行きましょう!

脇で見ていて涙が出た!

何をこの野郎!そんなに真似したかったら、六尺棒を持って追っかけてこい!
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六尺棒を聞いて
まず六尺ってどのくらいだろう?と思った方もいると思います。
一尺は時代によっても変わりますが約30cmですので、六尺だと180cmです。
ちょうどブラッド・ピットさん、千原ジュニアさんと同じです。
結構長いですね。
何に使うかと言いますと、木刀のような護身用ですね。
今では中々わざわざ買うような人はいないのではないでしょうか。
昔はセコムもアルソックもありませんから、もしもの時はこの六尺棒で家を守っていたということですね。
今回の六尺棒に出てくる親子は一見仲が悪そうに見えて、実はすごい仲がいいですね。わざわざ外へ出て追いかけごっこをするくらいですから、相当なものです。
仲が悪かったら、お互い干渉し合わないですからね。喧嘩するほど仲がいいというのは、こういうことでしょう。
また、なぜ清六さんはよく働くのに、孝太郎さんは遊び呆けている・・・この違いはどこから来るのかな?とちょっと考えてみました。
私の個人的な意見としては、子供を子ども扱いしているか大人扱いをしているかの違いかなと思いました。
清六さんの親子関係は、仕事仲間でもあり、親子でもあり、吉原に一緒に行くような男友達のような関係でもあります。
状況に応じて、色々関係性が変わっています。
子どもとして見る関係だけでなく、同じ目線に立つ場合もあるということです。
しかし、孝太郎家の親子関係は、ただひたすらに孝右衛門が孝太郎を子供扱いしていると思うんです。
例えば、子供に勉強をしなさい!と言えば言うほど、子供が勉強をしなくなり、勉強をする意欲が薄れてしまうのと一緒です。
これは私の妄想ですが、おそらく孝右衛門は最初に孝太郎に『お前は俺の倅なんだから、仕事を覚えろ!覚えなくてはならないのだ!うちが代々続いているのも・・・』のような上から目線から始まったと思うんです。
そんなことを言われれば言われるほど、親の言いなりになるものか!と反発してしまうのは当然のような気がします。
親と子供だからと言って、親が子供にああだこうだ決めつけるのは逆効果だと言うことが分かりますね。
清六さん家のように、お互いが親友のように同じ目線に立って話せるといいのかもしれません。
でも孝太郎家のように、自分の言いたいことを喧嘩しながらも言い合える関係は、表裏がなくいい関係だと思います。
やはりお互い本音を言えると、どれだけ喧嘩をしても関係が崩れるようなことはないと思います。
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