落語【たぬき】台本 吹き出し風

落語 台本

昔から狐・狸は人を化かすと言いますが・・・

たぬきを聞くなら「柳家小さん」

柳家小さんの「たぬき」は、愛らしい狸とのやり取りが織り成す、ほのぼのとした笑いが魅力の一席です。小さんの温かみある語り口が、素朴で心温まる物語を一層引き立てます。どこか懐かしい、心和むひとときを味わえる作品です。

\Amazon Audileで聞けます/

野郎
野郎

おい・・・なんだって俺のとこにたぬきが来たんだよ・・・

たぬき
たぬき

あれ?お忘れですか?こないだ藪寺のとこで助けていただいいた小狸です!

野郎
野郎

藪寺?あぁ!あの時か!それで、何しに来たんだ

たぬき
たぬき

恩を受けて恩を返さないような狸は人間にも劣る狸と親方から怒られまして、恩返しにやってきました!

たぬき
たぬき

なにか困ったことはございませんか?

野郎
野郎

おいおい・・・よしてくれよ・・・まさか狸に恩返しされるとは思わねえやな・・・

野郎
野郎

困ったことかぁ・・・まあねえことはねえんだけどよ・・・

野郎
野郎

実はな、借金があってな・・・8円ほど越後の呉服屋に借りがあるんだよ・・・

野郎
野郎

また今日取り立てにくるんだけども、ここんところ仕事もなくて稼ぎがねぇんだ・・・

たぬき
たぬき

なるほど!それならあたしに任せてください!8円札に化けますから!

野郎
野郎

おいちょっと待ちなよ・・・そんな半端な札はねぇよ・・・

野郎
野郎

じゃあおめえ10円札には化けられるか?

たぬき
たぬき

お安い御用です!じゃあ旦那!目をつぶって三回手を叩いてください!

野郎
野郎

目をつぶって?三回叩くんだな?いくぞ!

野郎
野郎

ひの・・・ふの・・・み!

野郎
野郎

目開けるぞ?

野郎
野郎

おや?化けたねぇ~狸公!

野郎
野郎

でもちょいと大きすぎるよ・・・畳一畳くらいあるじゃねえか・・・

野郎
野郎

もうちょっと小さくなりなよ・・・小さく小さく小さく・・・

野郎
野郎

おい、そりゃ小さくなり過ぎだ・・・見えねえじゃねえか・・・

野郎
野郎

もうちょっと大きく・・・よ~し!そのぐらいだ!

野郎
野郎

ほぉ~見事だねぇ!重さもちゃんと違うんだね・・・こっちが表でこっちが裏か・・・

野郎
野郎

おっと裏は毛だらけじゃねえか!だめだよ引っ込ませなきゃ!よし!

野郎
野郎

よ~し!なるほど、これはどこから見ても本物だ!

野郎
野郎

なに?ぐるぐる回すと目が回ります?

たぬき
たぬき

ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!

野郎
野郎

なんだ大きい声出して・・・どうした?

野郎
野郎

二つに折ると?背骨が折れる?

野郎
野郎

しょうがねぇな・・・横にしておくか・・・

呉服屋
呉服屋

ごめんくださいまし!ごめんくださいまし!越後の呉服屋でございますが!

野郎
野郎

ちょうどいいや!狸公!おめえそのまんま化けてろよ?

野郎
野郎

おう!戸は開いてるよ!そこから入ってくんねえな!

呉服屋
呉服屋

へい・・・親方、今日こそは払っていただきたいんでございますが・・・

野郎
野郎

おう!ちょうどいいや!今出来立てなんだ!

呉服屋
呉服屋

それはよろしゅうございました・・・

野郎
野郎

ここに十円あるからよ、持ってってくんねえな!

野郎
野郎

釣りはいらねえよ!今まで世話かけた分だ!とっといてくんねえ!

呉服屋
呉服屋

あぁ左様でございますか、恐れ入ります・・・

呉服屋
呉服屋

親方、これはまた手を切るような立派なお札でございますなぁ・・・

野郎
野郎

手は切らねえかもしれねえが、引っ掻くかもしれねえぞ?

呉服屋
呉服屋

ひ、引っ掻くとは・・・

野郎
野郎

いやいやこっちの話だよ・・・まあまあとりあえず取っておいてくれな!

野郎
野郎

ではありがたくちょうだい致します・・・

呉服屋
呉服屋

それではまたごひいきのほど、よろしくお願いいたします・・・

野郎
野郎

はいよ!ごくろうさん!

野郎
野郎

おい!狸公!うまくいったぞ!

野郎
野郎

・・・

野郎
野郎

あれ?・・・あ!狸公のやつ連れてかれちゃったよ!あの野郎大丈夫かな?

たぬき
たぬき

親方ぁ!ただいま帰りましたぁ!

野郎
野郎

おう狸公!大丈夫だったか!?

たぬき
たぬき

もう親方ってのは信用ないんですねぇ・・・

たぬき
たぬき

親方んところにこんな新しい札があるわけがないってんで、あたしを天秤にかざしてくるくる回したりなんかして・・・

たぬき
たぬき

眩しいやら目が回るやらで、そのうちあたしを四つに折りたたんでがま口の奥にぐいぐい押し込むんですからとんでもありませんよぉ!

たぬき
たぬき

あんまり苦しいもんでがま口の隅食い破って逃げてきたんですよ!

たぬき
たぬき

それでそん時に同じような札が三枚ほどありましたので、ここへ咥えて持ってまいりました!

野郎
野郎

おいおい・・・札が札を咥えちゃいけねえや・・・

たぬきを聞くなら「柳家小さん」

柳家小さんの「たぬき」は、愛らしい狸とのやり取りが織り成す、ほのぼのとした笑いが魅力の一席です。小さんの温かみある語り口が、素朴で心温まる物語を一層引き立てます。どこか懐かしい、心和むひとときを味わえる作品です。

\Amazon Audileで聞けます/

たぬきを聞いて

そもそもなぜ狸や狐が人間を化かすと言われるようになったのでしょうか?

それは諸説がありますが、中国からが発祥です。

中国が周という名前で統一されていた時代に、九尾の狐が王妃を食い殺して化け、王を手玉にとって国家を転覆させたという伝説があります。

この九尾が日本に渡り、玉藻前(たまものまえ)として宮中に使えて、鳥羽上皇(とばじょうこう)をたぶらかして暗殺することを企てたという伝説もあります。

これが歌舞伎や人形浄瑠璃で取り上げられることで人々の間に広まり、狐・狸は人を化かす動物だと言われるようになりました。

人間の勝手な昔話でイメージを付けられる狐や狸にとってはいい迷惑かもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました