やめようやめようと思って辞められないというのがお酒だそうでございますが・・・
これはある親子のお話でございますが、この親が大変な酒飲み・・・
倅が輪をかけて酒飲みという・・・
親子酒を聞くなら「古今亭志ん生」
古今亭志ん生の「親子酒」は、酒好きの親子が繰り広げる滑稽で哀愁漂う物語です。親子それぞれの愚かさと愛嬌が、志ん生の独特な語りで絶妙に表現されています。笑いの中にほろりとさせる味わい深い一席です。
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お前はいけないね・・・これからこの身代(所帯)を継いでいかなくちゃならないんだから、お酒はやめなさい!
もちろん!お前だけというわけにはいかないから、あたしも一緒にやめる!いいな?
決して飲むんじゃないぞ!?
分かりました!
親子でもって禁酒の約束をいたします・・・
さて三日目ぐらいになりますってと・・・
・・・んん・・・ばあさん!おばあさん!
はい!なんです?
あの~・・・あれだねぇ!やっぱり夜になると冷えるねぇ!
え?えぇ・・・
あぁいやちょっと暖まりたいなぁ~と思ってさ!
いやこたつじゃなくて、その中から暖まるものをさ・・・お腹に入れたらぽぅっと暖かくなるものをさ・・・
ちょっとこう・・・一杯だけ・・・
・・・
・・・まさかあれですか?
・・・むふふ・・・あれをね・・・一杯だけ・・・
・・・葛根湯?
違う違う・・・分かってんだろ?わざとそう言うことを言うんだから・・・
酒をさ!一杯きゅ~っと!
いけません・・・何がってそうじゃありませんか!
あなた今、倅の孝太郎と禁酒の約束をしてるじゃありませんか!
それもあなたの方から言い出したんですから!言い出しのあなたが飲んでどうするんですか!
いやいやあいつはまだ若いんだよ!他にも楽しみがあるんだよ?
あたしにはこれしかないんだから!なぁいいだろ?
それに今日はお得意様の所をぐるっと廻ってるんだ、帰りが遅いよ?
戻ってくる前に、一杯きゅ~っと飲んで寝ちまえばいいんだから!
ね?おねがい!この通り!長年連れ添ってきた・・・
・・・うなじが綺麗だよ・・・
ね?この通り!
・・・しょうがない、じゃあ一杯だけですよ?
あぁすまないね、ありがとありがと・・・
あの湯呑で!急に帰って来られてもなんとかなるように・・・
あぁ、すいません・・・どうもどうも・・・いただきますよ!
・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
・・・んふぅ・・・
三日ぶり!すと~ん!何にも当たらずに胃の中へ入っていった・・・
だから味も何も分からなかったからもう一杯!もう一杯でおしまいにするから!
あぁ・・・ありがとありがと・・・
ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
・・・んふぅ・・・
あの・・・駆けつけ三杯って言うからさ・・・
いやもうこれ本当に!本当に最後だから!これでおしまいにしますから!
はい!はい!どうも!どうも・・・
酒はいいねぇ・・・水じゃこうはいかねえもの・・・
ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
・・・はぁ・・・ふぅ・・・
いやいやもう一杯なんて言いませんよ!あたしだって男ですから!
いえいえ言いません!言いま・・・
・・・半分!もう半分だけだから!もう半分もう半分・・・
もう面倒だ!しまいには全部持って来~い!
・・・なにをやっているんだぁ~・・・すぐに持ってこなくちゃだめだぞぉ・・・
なに・・・?ひくっ!・・・倅が?・・・ひくっ!戻ってくだぁ?
そりゃあ大変だぁ大変だぁ・・・大丈夫大丈夫ぅ・・・
あたしはシャキッとしてるよぉ・・・ひくっ・・・通しなさいぃ!
誰だそこへ来たのはぁ!?ひくっ・・・孝太郎かぁ?入んなさ~い!
・・・
おとっつぁ~ん!た~だいまぁ~~戻りまじだぁーー!!
お前へべれけだなぁ!
あっはっはっはぁ!!おとっつあんの言いつけ通りお得意様ぁ全部廻ったんですよぉ!
そしたら、一番最後のおしまいが伊勢屋さんのところでぇ~!
伊勢屋の旦那が「おう!せっかく来たんだったら一杯飲んでけ!」って言うからさぁ・・・
だからあたしは、今おとっつあんと禁酒の約束をしてるから飲めませんってそういったんだぁ!
そしたら「なにをお前は馬鹿なことを言ってるんだ!」ってぇ・・・
「お前達親子が酒をやめられるわけがない!大丈夫だから飲め」って言うんですぅ!
「どうせ今頃おめえの親父も飲んでっから!構うことはねえから飲め飲めって!
だぁからぁあだしが、いや!それでも男と男の約束ですから飲めませんって言ったんだぁ!
そしたら旦那がぁ、ひくっ・・・「そんなに強情はるならお前を出入り止めにする!それでもいいか!?」ってぇ・・・
だぁからぁあだしは言ってやった・・・
何を言ってるんです!出入り止め結構ですぅ!それでも結構ですからこの約束を守って飲みません!
そしたら旦那がぁ、「偉い!お前は偉い!脅されても約束を守る男気がある!気に入った!」
「よしっ!その男気があるところを見込んで一本いくかぁ!」
いただきましょう!ってぇ!あ~っはっはっはっはぁ!!結局二升五合開けちゃったぁ!
やっぱり好きなものは何だかんだ言ってやめられませんなぁ!
この・・・馬鹿野郎ぅ!ひくっ・・・
お前はどうしておとっつあんみたいにスパッとやめられなぁ~い!
お前はこの身代を継・・・ひくっ・・・
おばあさ~ん!見てごらんなさ~い!この馬鹿ぁ!
あだしの言うことを聞かずに酒ばっかり飲んでるから見ろぉ!
顔が七つにも八つにもなっているぅ!この化け物がぁ!
お前みたいな化け物にこの身代は譲れましぇん!
あぁ~っはっはっは!!馬鹿言っちゃいけませんよぉ!おとっつあん~!
あたしだってこんなぐるぐる回る家ぇもらったってしょうがない・・・
親子酒を聞くなら「古今亭志ん生」
古今亭志ん生の「親子酒」は、酒好きの親子が繰り広げる滑稽で哀愁漂う物語です。親子それぞれの愚かさと愛嬌が、志ん生の独特な語りで絶妙に表現されています。笑いの中にほろりとさせる味わい深い一席です。
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