世の中では愛想のよろしい方が、少し世渡りでは得をするようでございますけれども・・・
ちりとてちんを聞くなら「柳家小さん」
ちりとてちんの見どころは、最後に寅さんがこの世の物とは思えぬ腐った豆腐を食べるシーンである。音源よりは映像で見る方が、小さんの福々しい顔が苦悶の表情に包まれる迫力が得られる。しかし、独特の間と想像力を掻き立てられる音源によっても小さんの演技力は十分に伝わる。
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タケさん、良く来てくれました、やっとくれやっとくれ・・・
お前さんが来てくれて助かった・・・
見ておくれ？お膳があれだけ積んである・・・
皮肉なもんだねえ、板さんお膳の支度が出来ました、けれども来るはずの人が1人も来ない・・・
うちはお清と二人ですからとても片付かないんだ・・・
まさか捨てるわけにもいかないんからね、どんどんやっておくれ
このお酒がね？灘の生一本蔵出しだってんだね、あたりがいいんだやっておくれ？
じ、実在したんでございますか？
いえ私、幻だと伺ってたもんですから・・ああそうですか・・
え？お清さんが？お酌をします？
えへへ・・どうもすいません・・・
いえ私こないだから、いっぺんでいいからあなたのお酌でやってみたいと思っていたんでございますよ！
いやぁどうも恐れ入ります・・・
これが灘の生一本という酒でございますか・・・
うまい！
飲んでから言ったらどうだい・・・
そこに鯛の刺身がありますしね？ほら鯛のかば焼きだ！
そうですかぁ・・いやぁ・・・
こういう大層な食べ物が日本にあるというお噂だけはお耳に挟んでおりましたけれども初めてでございますよ！
そうかそうか、嬉しいねえ・・・
あっそうだ、冷や奴があったろ？ひとつ・・・
え？何？この間のお豆腐でもいいですか？
・・・お前今何て言った？
何そのこの間のお豆腐って・・・
いつの話よ？
え？ひと月前の？
駄目だろお前・・ひと月前の・・・
え？鍋に蓋がしてあるから大丈夫って？
余計不味いだろそれは・・・
どれどれ持ってきれご覧？
この中に私がひと月前に残した豆腐がひとつ入ってんのか？
どれ・・・
うぅ・・うわぁ・・大変身を遂げた！
ああ～嫌な匂いがするわ、真っ黄色！
ぬわっと・・よく見たら周りにずいぶん毛が生えて・・・
なるほどね・・・
豆腐ってのは長く置いておくと毛が生えるのか・・・
何？羨ましいでしょうだぁ？やかましい！そっちへ持っていきな！
いやごめんなさいねタケさん、確かに日頃から私はものは大切にしなさいとは言っていますが・・・
あっ！まだ捨てるな！
ちょっとこっちへ持ってきな！使い道があるんだ！
唐辛子はあるか？よしよしよし・・・
それから端と皿とさじとね、何か空き瓶が・・・塩辛の空いたやつ・・・
よしよしよしよし・・ちょっとゆっくりやっていてもらいたい・・・
あたくし、ちょっとここで一仕事させてもらいますから
うぅ・・すごい匂いだねぇ・・・
え～っとこの唐辛子をここに振りかけてと・・
え～これを箸で・・・
ぶっ・・うぅっ・・・
真っ赤っかでドロドロになった、よしよし・・これもこうやって・・
そっちへ持ってって・・よしよし、いや捨てない捨てない・・・
そこに置いといて、私が持ってきてと言ったら持っといで？
それからね、ひとっ走り行って寅さんをここに呼んで・・・
まあそうグズグズ言わないで、私が呼んでるからって急いで下さい？頼みましたよ？
あ～いやいや面白いね、お前とまるで反対の人間がいるんだよ・・
今呼びにやった寅さん、皮肉な奴でね・・・
何を言っても聞かせても、褒めたためしがないんだよ・・・
何か御馳走して、うまいのうの字も言わない・・・
悔しいからね、機会があったら一度仕返しをしてやろうかなと思っていたんだ
何か御馳走して、うまいのうの字も言わない・・・
悔しいからね、機会があったら一度仕返しをしてやろうかなと思っていたんだ・・・
今ここに来るんだ、いやいや帰れと言ってるわけじゃない・・・
お膳をもってね、向こうの部屋に隠れて見てておくれ？
面白いものが見れるから・・・
ちりとてちんを聞くなら「柳家小さん」
ちりとてちんの見どころは、最後に寅さんがこの世の物とは思えぬ腐った豆腐を食べるシーンである。音源よりは映像で見る方が、小さんの福々しい顔が苦悶の表情に包まれる迫力が得られる。しかし、独特の間と想像力を掻き立てられる音源によっても小さんの演技力は十分に伝わる。
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ああ・・帰って・・・来た来た来た・・・
寅さん、まあまあ上がって上がって、そこに座っておくれよ
何だな・・全く・・・
今うちでおまんまを食い終わったら何だか知らないが急いで来いって言うから
とうとう旦那が死にやがったかと思ってきたのに・・・
いや私は丈夫ですよ・・・
そうじゃないんだ、見ておくれ、お膳が積んである・・・
今日ね、人寄せがあったんだが誰もお見えにならない・・・
弱ったよ、お清と二人じゃ片付かない・・・
食べるもの捨てる訳にはいかないだろ？お前に手伝ってもらおうと思ってな？
鯛の刺身とそれから鯛のかば焼きとあるんで、いいだけやっておくれよ
ふん、鯛ねぇ・・・何がいいんだろうねぇ・・・
もぐもぐ・・・
はっきりしねえ味だねえ・・・
海行きゃ、もっと色々泳いでる、よりによってさ、もぐもぐ・・・
これをもうごちそうとは言わなくなったんだから・・・
もぐもぐ・・・
そういうところが・・・
もぐもぐ・・・
終わった・・・
終わったじゃないよ！たいらげるんなら、もう少し言いようがあるだろ？
そこにうなぎうなぎ！
なんだ、うなぎうなぎって・・・
え？これウナギか？これ？
ひもが焦げてるかと思った・・・
ああ！養殖か！
え？
人間から餌をもらって育つから、何て言うんだろ・・・
のほほんとして、ゆとりだな！
そう！生活に努力の跡が見られないんだ・・・
こういうやつは大抵、面が間抜けで
いやわたしうなぎの顔立ちは見たことないけどさ・・・
弱ったね、お前さん口がおごってるから、こんなんじゃ喜んでもらえないか・・・
実はね、うちに珍味があるんだ・・・
食べ方が分からなくて弱っていたんだけどね？
お前は通だからお前来たら、食べ方教わろうかと思っていた・・・
台湾に行った奴からの土産でね？
瓶詰で真っ赤な色をしててさ、食べ方が分からないんだよ・・・
お前さん知ってるかい？台湾土産で瓶詰の真っ赤な色をした・・・
名前が確か・・そうだ！
「ちりとてちん」ってんだけどさ
ああ！知ってる！知ってる！
あっ、そうか、それは良かった！食べ方教えておくれよ！
お清！さっきの持ってきておくれよ！
笑いながら持ってくるんじゃない・・これなんだけどね！
うわぁ！懐かしい、この光沢！
あ～これは高級品だ、練り物は・・・
向こう行くとね粉末もあるんだ、粉末の方はちりんとんてんちんと言ってね・・・
こっちの方が高級なんだ！
詳しいねぇ流石だよ！食べ方を教えておくれよ？
お皿貸しておくれ・・・ほれ
しょうがないですな・・・どれ・・
うぅ・・・おえっ・・・
だ、大丈夫大丈夫、ちょっとあんまり懐かしいもんだからね・・・
うぅ・・・あんまり懐かしいからこれ家帰ってちびちびやろうかな・・・
いやいやそんなこと言わないで、食べ方教えておくれよ、ここでさ
いやいやこれは中々手に入らない・・・
はぁ・・・
いいよいいよ、じゃあもう帰れ帰れ・・・
そんなこと言ってるところを見ると食べ方知らないんだろ？
知ってる！はっきり言う！
ちりとて友の会、アジア大会ってのがあったんだ・・・
日本代表なんだ・・・うぅ・・・
思い出した！
こういう高級品は鼻をつまんで息を止めて、一気にやるんだ！
こうやって・・・
うぅ！！うっ・・うぅ・・・
は・・・おぇっ・・・うぅ・・
ずいぶん難しい顔をして食べるんだな・・ほらお茶！
うぅ・・ごくごくっ・・・
う・・・う・・・うまい！
ほう！どんな味がした？
ちょうど豆腐の腐ったような味がした・・・
ちりとてちんを聞くなら「柳家小さん」
ちりとてちんの見どころは、最後に寅さんがこの世の物とは思えぬ腐った豆腐を食べるシーンである。音源よりは映像で見る方が、小さんの福々しい顔が苦悶の表情に包まれる迫力が得られる。しかし、独特の間と想像力を掻き立てられる音源によっても小さんの演技力は十分に伝わる。
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